□平沢家は、今日も平和です
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「和先輩がいなかったら、私が唯先輩に憧れて軽音部に入ることも、桜高に入ることすらなかったかもしれないし。憂に出会うことも、なかったかもしれないから」

憂はきっと、唯先輩を追って桜高に入った筈だ。
私も、録音で唯先輩のギターを聴いて、それに惹かれて桜高に入った。

「その理屈だと、梓ちゃんは唯に感謝すべきなんじゃないかしら?」

困ったように、でも何処か楽しそうに笑う。
表面的に見れば、そうかもしれない。でも、根本的には、そうじゃない。

「だって、唯先輩は和先輩と居たくて、桜高に入ったようなものじゃないですか」

唯先輩は、好きなことには本当に一生懸命だ。
だったら、軽音部の存在しない高校を、大好きな和先輩が目指したら、多少難しくても唯先輩は絶対に其処を目指す。そうなったら、当然軽音部の皆とも会えないし、ギターに出会うことすら、なかった筈だ。

「唯先輩は、好きなことには、ひたすら真っ直ぐな人ですから」

「それは、そうかも」

何かを思い出したのか、頬が赤らんでる。
それから、少し考えてる素振りを見せて。


「でも、それが私のお陰っていうのは、やっぱりちょっと違うと思うの」

やんわりと、まるで諭すように、言った。

「人の出会いは、偶然じゃなくて、全て必然なんだって。前に何かの本で読んだことがあるの。覚えてないだけで、前世の繋がりとか絆があるんだって」

だから、私が何もしなくても、貴女は逢うべき大切な人々に巡り合った筈だと。まるで、ファンタジーみたいなことを言ってるに、何故だか不思議と説得力がある。

「私達がこうやって談笑してることだって、もしかしたら運命かもしれないわね」

そう言って、穏やかな笑みを向ける和先輩に、不覚にもドキリとした。憧れとか、そういう意味で。
唯先輩が好きなのが、なんとなく分かる気がするなぁなんて考えてると。

「あーっ!?和ちゃんとあずにゃんがいちゃいちゃしてる!?」

台所から戻って来た唯先輩が、とんでもない勘違いをして、何やら一人で騒いでいる。

「してないわよ」
「してませんっ」

図らずも、声を揃えて否定することに。

「憂ー、二人が浮気してるよぉ」

「ちょっ…!?」

誤解だっていうのに、憂にまでなんてこと伝えてんですか。しかもなんか涙声だし。
と、和先輩が溜め息混じりに立ち上がって、唯先輩の頭を軽く小突く。

「唯、落ち着いて」

そして、唯先輩を抱き寄せたまま座らせて、慣れた手付きで、ポンポンと背中やら頭を優しく撫でる。

「…っ」

あ、大人しくなった。
暫くその行為が続いて、そして軽く口付けを、って後輩の面前で!?

「落ち着いた?」

「…ん」

唯先輩、完全に蕩けてる。意識半分どっか行ってません?
というか流石、和先輩。唯先輩の扱いに慣れてるなぁ。唯先輩の顔緩み過ぎだし。
ってか、私のこと完全に放置というより空気扱いですかとか、やっぱり和先輩もどっかずれてるよねとか、突っ込み所は満載だけど、取り敢えずまぁ、スルーの方向で。

でもちょっと羨ましいな、なんて思って眺めていたら。

「…梓ちゃん」

って、なんで憂そんなしょんぼりした顔してるのっ!?…あぁ、さっきの唯先輩の早とちりの所為か。

「大丈夫。私は憂一筋だよっ」

泣き出しそうな顔に、若干混乱しつつ、憂の手を握りながら、自分でも恥ずかしい言葉を吐いていると。

「ッ、アハハハ」


そのやり取りを見ていた和先輩が、何故か急に笑い出して。

「プッ、アハハ」

釣られて唯先輩も。

「フフッ」

なんか憂まで笑いだしてしまったから。

「ハハハッ」

思わず私も笑った。
一頻り笑った後、何もなかったかのように四人で談笑しながら、憂特製(盛り付けは唯先輩らしい)の夕飯に舌鼓を打つ。
軽音部とはまた違った空気だけど、なんか平和で良いなぁ、なんて考えてる自分がいた。


End
























あとがき
この四人が仲良くしてると、なんかほっこりする。
本命は唯和と憂梓だけど、唯梓と憂和でも可。
書くかは未定ってか書くつもりあんましないけどf^_^;
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