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□繋がったのは、今は手だけじゃなくて
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「じゃあな」
「まった明日〜」
「バイバーイ」
澪ちゃんとりっちゃんに手を振って、いつもの場所で別れる。
寒くなって来たから、振るう手は温かかった頃より抑え目に。
「うぅ〜、寒いよ〜」
12月に入って急激に冷たくなった風に耐えきれず、ポケットに手を入れる。
『ポケットに手を突っ込んだまま歩いてたら、危ないでしょ』
不意に、去年の今頃に彼女に言われた言葉を思い出す。
『ほら、手貸して』
言われるままに片手を差し出すと、そのまま手を握られて。
和ちゃんの手は、私の手と同様に温かくはなかったけど。その優しさで、胸はどきどき。心はぽかぽか。
その手をギュッと握ると、和ちゃんは優しく握り返してくれた。
好きだよって思わず告げてしまいそうになるけど、拒絶されるのが怖くて。触れ合える距離に満足してた。ぽかぽかだけど、ちょっと苦しい。
それはまだ、告白する勇気のなかった頃。
そんなこともあったなぁ。なんて、ぼんやり考えていると。
「うおゎ!?」
バランスを崩して、あわや地面に顔面から激突する所だった。
でも、誰かに支えられて、それは免れた。
「こらっ、危ないって言ったでしょ?」
「ごめんね。ありがとう、和ちゃん」
振り向くと、少し息を切らした和ちゃん。
慌てて駆け寄ってくれたらしい。
「吃驚したわよ。姿が見えたから声描けようと思ったら、突然躓くんだもの」
「面目ない」
「全く、仕方がないわね。ほら」
言われて、以前の如く差し出される手。
「ん」
にやける顔を必死に堪えながら、その手を取る。
だって、前とは違うから。もう、苦しくなることはないから。
「顔、思いっきりにやけてるけど」
抑えるだけ無駄じゃないって、苦笑しながら言われてしまいました。
よし、抑えるの止め。
「じゃあ、思いっきりにやけるね」
「不審だから、思いっきりはやめなさい」
イエッサー。適度ににやけることにします。
「へへ〜」
我ながら、酷く緩みきってるだろう笑顔を向けると、和ちゃんは少し呆れつつも、満更でもなさそうで。
「そういえば、去年もこんなことあったわね」
「そだね。去年はこっちは意識してるのに普通に手を繋がられちゃって悶々してたっけ」
懐かしむように言うと、和ちゃんはポカンとして、少し赤くなる。あ、去年からずっと好きだって言っちゃったからか。
まぁ、好きになったのは、もっと前からなんだけどね。
「…マジで?」
「うん」
数秒の沈黙の後。私達は、顔を見合わせて笑った。
それから、繋いだ手は、自然に絡まって。
そのまま肩を寄り添わせて。
互いの温もりを感じながら、ゆっくり歩を進めた。
End
あとがき
視点変えるんじゃなくて、話も少し変えてみました。
同じなのは、前から想い合ってたとこ。