□蕩けそうなのは、日溜まりの所為じゃなくて
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唯side


「…んぁ?」

ふと、目が覚める。
窓から射し込む暖かな日溜まりに目を細めながら、今置かれた状況を思い出す。

「あ」

肩に凭れ掛かる温もりで、ようやく状況を理解する。確か今日は和ちゃんが家に来て、一緒にお茶飲んだりして。それから、二人で日溜まりと互いの温もりを感じながらお喋りしてて、それがあんまり心地好くて、ついついうとうと微睡んじゃって。そのまま、寄り添い合って寝てたらしい。

隣に穏やかな寝息を発てている貴女がいるのが、その証拠。

普段はクールで、皆に頼られ愛されている生徒会長さんは、私の前では、こんなにも無防備で可愛いらしい。
その表情が、堪らなく愛しくて、思わずくしゃりと髪を撫でる。いつも和ちゃんがしてくれるみたいに。

ただの幼なじみから、恋人に変わっても私達の関係はそんなに変わらなかった。
ただ、和ちゃんは、前より笑ってくれてる気がする。前より、幸せそうに。

それに満足しちゃって、まだキスすら出来てない訳ですが。
和ちゃんも今の状態に満足してるらしく、そんな素振り全くと言って良い程見せないから。躊躇ったまま、出来ない訳で。
実を言うと私は、めちゃくちゃしたかったりするのだけど。こういう無防備なとこ見ちゃった時とか、二人きりになって幸せそうに笑ってる時とか。

なんて、端正で整った顔立ちをまじまじと見詰めながら、悶々としていると。

「…ん」

やばっ、起こした!?
と、慌てて撫でてた手をパッと離してみたけど、どうやら杞憂だったみたいで。和ちゃんはまた穏やかな寝息を発て始めた。

「…唯」

なんて、私の名を呟きながら。

「〜っ!?」

その声は、いつものクールな感じと違っていて。二人きりの時すら滅多に聴けない、甘えたような声。
ようするに、私の理性を吹き飛ばすには充分過ぎる程の破壊力を秘めてまして。

「ねぇ、和ちゃん。あんまり可愛いと、さ」

呟きながら、眼鏡に手を掛け、そっとを外す。


こんなことしたら、怒るかな?
でも、仕方ない。
貴女が、あまりにも。
無防備で可愛い過ぎるから。

恋人同士なんだから、これくらい良いよね?

なんて。
自問自答しながら、私は、貴女にキスをした。

初めて触れたその唇は、日溜まりのように暖かで、ケーキみたいに甘くて。
触れるだけのキスのつもりだったのに、溶けてしまいそうな感覚に呑まれて、貴女が目を覚ましてしまうまで堪能した。


目を覚ましたら、やっぱり怒る、かな?
でも、和ちゃんが。あんまり可愛くて。

愛し過ぎるんだから、仕方ないよ。





――――――――





和side


「…」

視線を感じて、うっすらと意識が覚醒する。
そういえば、唯の家に来て、一緒にお茶飲んで、他愛のない話をしてたんだっけ。それで、部屋に射し込む日溜まりとか、触れ合った唯の温もりが、あんまり心地好くて。気が付かない内に、寄り添い合って寝てたらしい。

さて。
目を覚まそうか、どうしようか。

普段、こんな風に私から寄り掛かることなんて、滅多にない。したくない訳じゃなく、私が甘え下手なだけなのだけど。
だから、もう少しだけ。このままでいたい。

と。不意に、くしゃりと髪を撫でられる。
珍しい。これじゃ、普段とは全く逆の立場ね。
唯は、私が実は起きてるなんて、微塵も気が付いてないようで。愛しいものに触れるように、優しく撫で続ける。
思ってたより、それが心地好くて。

「…ん」

思わず、声が漏れてしまって、慌てた感じに手が離される。
ここで目を開けるのも、何だか照れ臭い気がして、狸寝入りすることにした。

「…唯」

名を呟いたのは、寝言の振りのつもりだったのだけど。その声は我ながら、ひっくり返ったというか、妙に甘えたような声になってしまって。

「〜っ!?」

唯が、何か悶絶してるらしいのが、気配で分かる。
何か、嫌な予感が。

「ねぇ、和ちゃん。あんまり可愛いと、さ」

呟くその声は、いつものほわほわした感じじゃなくて。何だか、少し落ち着いてるというか、取り敢えずいつもより低かった。

え?眼鏡、外された?

「…っ」

瞬間。
唇を塞がれたのが、柔らかな感触により、理解出来た。

目を、覚ますべきだった。

狸寝入りなんて、してしまった手前。行為を止めるのは、あまりにも不自然。
それに、拒む理由もないんだけど。断りは欲しかった、かな。

でも、初めて触れたその唇は、日溜まりのように暖かで、ケーキみたいに甘くて。
触れるだけのキスだと思ったのに。唯もその感触に呑まれてしまったか、私が目を開けて僅かに身動ぐまで、止めなかった。

さて。
怒ろうか。呆れようか。どうしようか。
でもまぁ、半分は自業自得でもあるし。嫌ではなかったから。

取り敢えず、断りもなくあんなことしたって罰で、もう暫く甘えさせて貰うことにしよう。
罰どころか、喜ばせてしまうだけな気もするけど。
まぁ、こんなのもたまにはいっか。


End
























あとがき

ひだまりでほのぼのでらぶらぶなのが書きたくなって、前に似たような話書いてたので、ほんのり加筆修正してみました。
和が起きた(狸寝入りだけども)後も、なんだかんだで二人はいちゃいちゃしてると思う。
 

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