□交差する、不安感と多幸感
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「唯、誕生日おめでとう」
「ハッピーバースデーだよ、お姉ちゃん」
「誕生日おめでとうです。唯先輩」

「えへへ〜、ありがとう。和ちゃん、憂、あずにゃん」

そんな感じに、三人に祝われたのが、小時間前。
それから、あずにゃんの時みたいに、皆で一緒に寝るのかなって思ってたら。憂とあずにゃんは気を利かせてくれて。
現在、和ちゃんと二人きりでベッドにいるのだけど。

眠れない。

ちょっと前まで、二人で一緒に寝るなんて、普通だったのに。むしろ、安心して朝までぐっすりだったのに。
恋人関係に発展してからは、これが初でして。変に緊張して、眠れないのです。

隣の和ちゃんはと言いますと、既に目を瞑っていますが、寝てるかは分からない。
それにしても。

(…綺麗な顔)

見た目も可愛くも格好良くもあり。
勉強も運動も料理だって得意で。
性格だって、しっかり者で、優しくて、暖かくて。でも、たまに天然さん。

(全てが愛しいのは、惚れた弱み?)

その顔にソッと触れると、不意に妙な不安が頭を過る。
和ちゃんは、私にとって自慢の恋人だけど。
一緒にいるだけで、幸せだけど。

(私なんかで、良かったのかな)

告白した時、和ちゃんは受け入れてくれて。ちゃんと、好きだって言葉もくれた。
告白したのは、好きな気持ちを抑えられなくなっちゃったってこともあるけど。実はもう一つあって。
いろんな人の為に駆け回って、その度にどんどん好かれていく貴女を見て(それが無意識だから、天然って怖い)。誰かに、取られちゃうかもって、焦ったから。

(選択肢なんて、いくらでもあった筈なのに)

私は想いが通じ合って嬉しかったけど、和ちゃんの数ある選択肢を奪ってしまったような気がして、変な罪悪感。
なんで、こんな目出度い日に、センチメンタルな気分になってるんだろ、私。

「…どうしたの?」

「あ、ごめん。起こした?」

しまった。和ちゃん、起こしちゃった。

「寝てないわ。ずっと誰かさんが、隣でもぞもぞ動いてたしね」

「…すいやせん」

「眠れないの?」

冷たい言葉の後に、優しい微笑み。これが、ギャップ萌というやつですか?なんて、ふざけた話は置いといて。

「和ちゃんの顔があんまり綺麗で、ドキドキして眠れなかったんだよ」

半分は冗談。半分は、本気だったんだけど。

「…唯」

半分が嘘だって簡単に見抜かれて、真剣な顔して迫られて。誤魔化そうって、へにゃりと崩した顔は、瞬時に強張る。

「ごめん」

「謝らないで。…どうしたのか、教えて?」

本気で心配そうな顔で、心に響くような優しい声で。頬に手を添えられて、想われてるって感じて、何だか泣きたくなる。

「私で、良かったのかなって」

「…え?」

「和ちゃん、いろんな人に好かれてるから。私なんか、恋人になっちゃって良かったのかなって」

力なく、笑って言うと。和ちゃんは、呆れたような溜め息を吐く。

「それだと、私が唯のこと気にも留めてないみたいに聞こえるんだけど」

「あ…そうじゃなくてっ。ただ、なんていうか、釣り合わないって、変に不安になっただけっ」

言いながら、不安とか悲観とかいろんな感情がごちゃ混ぜになって、視界が滲む。

「…バカね」

頬を伝う涙を、スッと優しく拭う。
それから、優しく抱き締めて。

「どれだけ選択肢があったって。どれだけ告白を受けたって。私は、選ばない。選べないって言った方が正しいけど」

「選べない?」

「前に言わなかった?告白される度に、誰かさんの顔が浮かんだって」


「…あ」

言われて、思い出した。前に私が嫉妬しちゃった時に、和ちゃんがサラリと事も無げに放った言葉。

「それでもまだ、不安だって言うなら、証明して上げるわよ?あの時みたいに」

「っ!?」

あの時みたいってのは、もしかしなくても。
なんて、顔を赤くして思いだそうとするのも束の間、ゆっくりと和ちゃんの顔が近寄って来て。

「んっ」

額に、瞼に、頬に。
柔らかくて暖かな優しい感触が、降り注ぐ。

「和、ちゃ…!?」

そして、最後は唇に。
優しいキスを何度も。

「っ」

解放された時は、不安な気持ちは嘘のように消えていて。変わりに、多幸感で満たされた。

「不安な気持ち、消えた?」

止めは、自分からキスしたのに、ほんのり赤くなってる優しい笑顔。

「…ぅん」

なんかもう、ごちゃ混ぜな不安な気持ちとか、どっか遠くに行きました。っていうか、今は嬉しすぎるごちゃ混ぜな気持ちで、意識がどっか行きそうです。

「さ。早く寝ないと、今日の主役が寝不足で、隈の出来た顔じゃ、様にならないでしょ?」

言いながら、和ちゃんは私を抱き締めたまま、トン、トンって優しく背中を叩く。こうすることで、人は安心するらしい。私の場合、相手が和ちゃんだから余計に。
そのリズムを刻むその手は、私が寝付くまで、続いてて。

「おや、すみ」

安心感と多幸感でいっぱいの中。明日、起きたら、お礼言わなきゃって、ぼんやり思いながら。私の意識は、夢の世界へ飛んでった。
いろんな想いを込めて、心からの笑顔で。

ありがとうって。
それから、それからね。改めて、大大好きだよって。


End
























あとがき

なんかシリアスが湧いて出たので、勢いで書き殴りました(^_^;)
ぶっちゃけ梓誕駄文とほんのり被りました。唯の場合のパターンが書きたくなっただけなんですけどねf^_^;

さて。
アンケート作るか。

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