□知らない内に果たされていた、小さな約束
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「あ、お菓子が安いよ。これも買おうよっ」

「って、私達は夕御飯の材料を買いに来たんですよ?唯先輩」

「まぁ、良いんじゃない?夕御飯の後のお茶の時間に食べようよ」

「それも良いかもね。でもあまり余計な物は入れないでね」

休日の昼下がり。私達は四人で、近くのスーパーで買い物中。
いつもご馳走になってるから、今日は私と和先輩が料理を振る舞う予定。それで、メニューを決めて、材料をしっかりメモして、品を探してる中、唯先輩が時折に余計な物を持ってきて。私が突っ込んで、憂は買う方向に考えたり、和先輩はそれが必要なら肯定して、不必要ならやんわり否定する。それは例えば、四人の内の誰かが好きな物だったり(まぁ、流石というか高確率で和先輩が好きな物だけど)、たまに本当に要らない物もあったりする。

「それにしても楽しみだなぁ、和ちゃんの料理」

「いつもお弁当のおかずあげてるでしょ?それに、今日は梓ちゃんだって手伝ってくれるし」

「お弁当と出来立ての料理は別物だよっ。あずにゃんのことも勿論、忘れてないよ〜」
はいはい。腕組んでバカップルオーラ発して歩きながら、私の名前大声で呼ばないで下さい。恥ずかしい。

「全く、唯先輩は」

「私も楽しみだなぁ。二人の料理」

溜め息を吐いていると、隣を歩く憂が嬉しそうに笑う。私達の手も実はちゃっかり繋いであったりするので、人のことは言えないけどね。

「頑張りたいけど、いつもの唯先輩の如くなフォローしか出来ない気がする」

いつもは和先輩と二人で調理中の憂達のことを話しながら、談笑してたりするけど、今回は逆のパターンなんだよね。

「大丈夫、愛さえ籠ってればっ。お姉ちゃんも、仕上げにたっぷり愛籠めてるから」

「…そうなんだ」

それって、やっぱり、唯先輩と同レベルってこと?

なんて、うっすら傷付いてると。
視界の隅に、幾つかの遊具が過る。其処には、囲う鎖と使用禁止の札。
親の買い物を待つ子供の遊び場にある、使われなくなってしまった、若しくは壊れてしまったらしい遊具。

「…あ」

不意に、十年程前の記憶が、蘇ってきた。
そう。あれは確か。

またね。って別れた。たった一度きりの会瀬。
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