□温もりを共有して、その魅力を知った
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ダイニングからは聴こえるのは、とんとんと何かを刻む音とパタパタと忙しない誰かさんの足音。
時たまに、お姉ちゃん、お醤油取って〜とか聴こえてくる。唯先輩は憂を手伝うとか言ってたけど、完全にただのフォローだよね。

「唯は相変わらずね」

「全くですね」

そんな二人の様子を、音だけで大体想像しながら、いつものようにリビングで和先輩と待機中。
そんなに会話はしないけど、この時間も嫌いじゃない。なんか、和先輩って近くに居るだけで落ち着くっていうか。不思議な雰囲気持ってるんだよね。でも、私はこの前嫉妬しちゃったんだっけ。そういえば、唯先輩は和ちゃんのこと好きになってって言ってたな。別に嫌いな訳じゃないし、むしろ好感の持てる人だと思う。
憂みたいに甘えてみたら、もう少し和先輩のこと、分かるのかな。

「和先輩、ちょっと良いですか?」

「ん?」

話し掛けると、和先輩はダイニングに向けられていた視線を、此方に向けて微笑む。
相変わらず、穏やかで優しい表情で。

「その、抱き付いてもよろしいでしょうか?」

和先輩は笑顔のまま、固まってしまった。
しまった。我ながら唐突過ぎた!?


「へ、変な意味じゃなくて…この前、憂が甘えてたの見ちゃって。それで、憂があんまり嬉しそうだったから、どんな感じだったのかなって」

そこまで言うと、和先輩は理解してくれたようで。

「あぁ、成る程。良いわよ」

拒否するでもなく、然も当然のように、受け入れてくれた。
失礼ではあるけど、流石は唯先輩の幼なじみ。

「では、お言葉に甘えまして」

おずおずと、ゆっくり後ろから抱き締めると、和先輩は少し擽ったそうにして。

「後ろからじゃ、撫でてあげられないわね」

なんて、言って笑ってる。冗談かと思ったけど、多分本気というか、彼女にしてみれば、それも当たり前なのかもしれない。

「正面からの方が良かったですか?」

「っていうか、憂がそうだったから、てっきりそう来るかなって」

「…じゃあ」

真正面からって、ちょっと抵抗あったけど、気にしてないみたいだから、移動して今度は正面から抱き付くと。
予告通り、くしゃくしゃと、優しく頭を撫でられた。

「…ん」

思わず、そんな声が漏れちゃうくらい、その触れ方は優しくて心地好くて、それだけでなんか安心する。
唯先輩や憂が甘えちゃうのも、分かる気がするな。なんてぼんやり思っていると。

「梓和フラグ再び!?」

いつの間にか此方にやって来たらしい唯先輩の口から、訳の分からない言語が聴こえてきた。

「あ〜、梓ちゃんが和ちゃんに甘えてる」

突っ込み間もなく、続いて憂も。唯先輩の言葉は置いといて、憂の方が多分正解。
あ、でもそろそろ離れるべきだよね。それから、取り敢えず弁明しなきゃ。

「あずにゃんずるい〜。私も甘えるっ」

ってそう来るんですか!?
元はといえば、貴女が好きになってって言った結果がこれなんですが。なんて言う暇もなく、唯先輩は和先輩の背中に抱き付いて、頬をぐりぐり擦り寄せて甘えてる。

「ちょ…唯!?」

その瞬間、和先輩の表情が、困りながらもさっきより赤らんでるのが、真正面から抱き付いてるからよく分かる。それでも私が抱き付いた時より嬉しそうで、唯先輩が本当に好きなんだなって思った。

「あ、じゃあ私も〜」

「って、憂まで!?」

更に、一人残された憂も、混じりたかったようで。私の隣の位置から抱き付いて、和ちゃんに抱き着くと落ち着くんだよねって笑ってた。どうやら、弁明の必要はないらしい。
っていうか。


「え?何この状況、私の所為?」

という訳(←!?)で、三人揃って和先輩に抱き着くという奇妙な光景の出来上がり。
身動き出来なくなったにも関わらず、和先輩は呆れてはいたみたいだけど、嫌な顔せずやれやれって何処か嬉しそうに笑ってた。

そんなおおらかなで優しい姿を見ていると、なんだか本気で好きになれそうな気がした。
勿論、取りませんから、その辺は安心して下さいね。唯先輩。


End



























あとがき
平沢家で和総受けっぽく書いてみた。
誰得とか関係なく完全にただの自己満ですf^_^;

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