□誰も知らない表情に、言い様のない優越感
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「和って結構ポーカーフェイスだよな」

「へ?」

それは、軽音部の皆といつものようにお茶を飲んでた時のこと。
何故か和ちゃんの話題になって、りっちゃんがそんなことを言い出した。

「あー、確かに。怒ったり笑ったりはするけど、動じないっぽいとこあるよな」

それに、澪ちゃんも賛同。
むむ。和ちゃんはあぁ見えて表情豊かなのに。

「ふふ。唯ちゃんは不満そうね」

私の表情に気付いて、ムギちゃんは楽しそうに言う。

「だって、りっちゃんも澪ちゃんも分かってないよ。和ちゃんはあんなに表情豊かなのに」

私の言葉に、二人共目を丸くしている。ムギちゃんは相変わらず、頬を赤らめて嬉しそう。
へ?私、なんか変なこと言った!?

「それ、唯先輩の前だけじゃないですか?」

と、先程まで黙ってお茶を啜ってたあずにゃんも会話に加わった。

「私の前、だけ?」

「だって、先輩達は…幼なじみじゃないですか。だから、微妙な表情にも気付けるんだと思いますよ」

少しの間を置いて、言葉を変えたのは、私と和ちゃんが付き合ってるって軽音部の中で知ってるのは、今のところ憂と付き合ってるあずにゃんだけだから。
どうやら、気を利かせてくれたらしい。
秘密にするつもりはない。ただなんとなく、タイミングが掴めなくてまだ言えてないだけ。

「あー、なんか分かる。私も澪の微妙な表情とかなら、分かるぞ」

「ほー。私は、律の挙動不審になった時の心情なら、分かるけどな」

ニヤニヤしながら言うりっちゃんに、澪ちゃんも負けじと返す。

「まぁ。澪ちゃんったら、照れちゃってそんな大嘘を」

「律だって、出任せじゃないだろうな」

そんな言い合いが少しの間続いて、和ちゃんの話題は何処へやら。

ところで、ムギちゃん。
さっきから机に突っ伏してますけど、大丈夫?

「ま、あぁいうことです。きっと和先輩も、唯先輩すら気付いてない微妙な表情とか、知ってるんじゃないですか?」

長く付き合ってるだけじゃなくて、想いも通じ合ってるんですから。と、あずにゃんは小さく付け加える。

「はぁ、成る程」

言い合いながらも、顔は笑ってる二人を見て、なんとなく理解した、気がする。


――――――――――


「和ちゃん、一緒に帰ろっ」

あの後、なんやかんやで、話は別の方向へ行って。


じっと見入っていたせいか、和ちゃんは不思議そうに首を傾げる。

「あ、ごめん。見惚れてた」

思わず本音を漏らすと。

「もう、何言ってるのよ」

その顔はほんのり赤らむ。
あ、照れた。可愛い。

「へへっ。帰ろっか」

緩む頬を抑えつつ、ギュッと腕に抱き付くと、照れたような嬉しそうな感じに変わるその表情。
そんな可愛い顔を、私しか知らないと思うと、なんだか嬉しくて仕方ない。

「何にやけてるのよ」

そりゃ、ね。
大好きな貴女の誰も気付かない表情が分かる優越感と。

「和ちゃんが可愛いから」

事実だから割りと真顔で言ったら、顔を真っ赤にして、バカって呟かれた。
あぁ、照れ隠しかって分かって。余計ににやけそうな口元を隠す為に、そのまま腕に顔も押し付ける。

ポーカーフェイスが崩れるのが、恋人の前って。
凄く反則だって、心の底から思った。


End

























あとがき
照れる和を目指して、それをどう唯に意識させようと考えた末、軽音部の面々も出してみましたf^_^;
こんなんでいいか分かりませんが、どうか受け取ってやって下さいm(_ _)m

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