□優しい貴女への、不安の取り除き方
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「憂、最近なんか嬉しそうだよね」

二人きりの帰り道。何気なく、そんな話を振る。

「うん。分かるかな?」

それはもう、分かりやすいくらいに。

「原因は、唯先輩?」

そう付け加えると。
不思議そうに目を丸くして、なんでそんなことまで分かるの?って顔してる。
きっと、最近唯先輩の笑顔が輝きを増したことに関係してるんだろうな。なんて考えてたから、案の定。

「お姉ちゃん、ずっと大好きだった人と想いが通じ合ったんだって、凄く嬉しそうで。相手の人、私も大好きな人だから、二人が幸せそうなの見てると、私も嬉しくて」

道理で。
普段から笑顔のほんわかしてる人だけど、最近の眩しさは半端なく、幸せなオーラを放ってる。

「相手の人って、もしかして和先輩?」

「よく分かるね?」

だって、唯先輩がずっと大好きで憂も大好きな人って、和先輩くらいしか思い浮かばないよ。少なくとも私には。

「でも、寂しくないの?」

あの二人なら、憂をほったらかしなんかにはしないと思うけど。
逆に、憂が遠慮して距離を置いちゃいそう。

「寂しいより、二人が笑顔なのが嬉しいから」

そう言いながらも、その笑顔は少し寂しそう。


「憂は、誰かの幸せを心から喜べる人だよね」

素敵だと思うな。なんて我ながら歯の浮いた台詞を言うと、憂はボンっとでも音を発てそうな勢いで紅くなる。
うわ、可愛い。

「あ、相手が梓ちゃんでも、きっと嬉しかったと思うな。私、梓ちゃん大好きだから」

ちょっと待って。なんでそうなるの?
ていうか、明らかに動揺してるよね?

「私が好きなのは、憂だよ」

途端、憂は硬直した。
どさくさに紛れたつもりだったんだけど、ちょっと唐突過ぎたかな。

「えっ…あっ…うん。知ってるよ。と、友達だもんね」

そうきたか。
もう、なんか。はっきりさせちゃおうか。

「憂の私に対する大好きって、友達の意味?」

「あっ…」

憂は、言葉に詰まる。
言いたい、でも言ってもいいのかなって。多分、そんな葛藤と闘ってる。

「ねぇ、聴かせて?」

真っ直ぐに、瞳を見詰めると。観念したように、憂は口を開いた。

「私は、梓ちゃんが好き。友達としてじゃなく、特別な意味で。…梓ちゃんは?」

問い返すその声は、少し震えてる。

「一緒だよ。憂と」

だから、安心させるように、出来るだけ優しく応える。

「じゃあ、キスして」

「…へ?」


私の告白より、唐突だ。
きっと、証明が欲しいんだろうけど。

「…嫌?」

そう呟く憂は、不安そうな顔。
あぁ、もう。

「じゃあ、目瞑って」

じゃないと、恥ずかしいから。

「うん」

スッと素直に目を瞑る憂の唇に、触れるだけのキスを落とす。

「…えへへ」

目を開いた憂は、さっきとは比べ物にならないくらい幸せそうに微笑う。
それは、何処と無く先輩に似ていたけど、紛れもなく憂自身の笑顔。

「信用した?」

「うん。ありがとう」

彼女の杞憂が消えたことに、ほっと胸を撫で下ろしていると。
不意に、唇に暖かいものが触れた。

「へ?」

「お返し」

そう言って憂は、楽しそうに笑ってる。
なんか悔しかったから、もう一度唇を塞いでやった。


End
























あとがき
唯和が成立したら、憂梓もなんとなく成立しそうかななんて思って書き殴りました。
なんかメインカプよりバカップルにf^_^;

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