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□それぞれの、祭りの楽しみ方
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「ありゃ、はぐれちゃった」

花火に少しでも近付こうと、あずにゃんの手を取って、皆と駆け出したは良いけど、人混みに紛れてあずにゃんと繋いでいた手の感触も消えてしまい、振り返ってはぐれちゃったかとか考えてたら、皆ともはぐれてしまいました。

♪〜

どうしようかと考えていると、携帯がメール着信音を奏で始めた。開いてみると、送信者はりっちゃんで、今日はこのまま解散。そして、明日は用事があったりするので、勉強は各自でという内容だった。直ぐ様、了解メールを送り、後一個くらい何か食べるか、遊ぶかしようかなとか考えて辺りを見渡すと。

「あ、あんなとこに」

我が恋人が、出店から少し離れたとこにある椅子に腰掛けて、りんご飴を頬張っている。
今日は用事があるとか言ってたのに、何故にそんなとこに?

「あら、唯?」

と、此方に気付いた和ちゃんが、顔を上げてひらひらと手を振る。

「私が誘っても無理って言ってたのに、どうしてここに和ちゃんがいるの?」

不貞腐れたように、頬を膨らませて言うと、やれやれといった顔をして。

「弟達と祭りを回ってたのよ。で、さっき両親が向かえに来て、たまには少し羽を伸ばしなさいって、弟達を連れ帰ったとこ」

あぁ、そういうこと。
でも、羽を伸ばすなら。

「座ってないで、金魚すくいとか射撃とかしないの?」

いっぱい遊ぶものあるのに、と首を傾げると。
和ちゃんは少し間を置いて。

「それも楽しいかもだけど…私、こうやって祭りを楽しんでる人達を眺めるの、結構好きなのよね」

そう言って、和ちゃんは笑う。食べてるりんご飴の所為か、少し唇が赤らんでて、色っぽく見えてちょっとドキッとした。

「なんか、和ちゃんらしい」


賑わう光景を眺める瞳は、学園祭を見守る時のそれに似ていた。
でも、折角のお祭りなんだから、さ。

「お祭りはやっぱり楽しまなきゃ」

「…え?」

そう言って、和ちゃんの手を取って。

「あっちに面白そうな店があったんだ。一緒に行こっ」

祭りの楽しみ方なんて、それぞれだけど、やっぱり今しか出来ないことは、やらなきゃ損だよね。

「ちょっ、ちょっと!?」
なんて、口では少し抵抗しながらも、その雰囲気は嫌そうじゃなくて。
それが嬉しくて、私は手を握る力を強くする。今度は、離さないように。

そして、私達は賑やかな光の中へ駆け込んで行った。


まぁ、実を言うと、色っぽく見えた恋人をこのまま放っておくと、これからナンパとかされちゃうんじゃないかと恐れたのが和ちゃんの手を取ったホントの理由、なんて恥ずかしいから和ちゃんには秘密ということで。


End




































あとがき
唯が帰るまで、こんなことくらいあっても良かったんじゃね?
とか思って出来た話。

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