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□涼を求めるも、振り出しに戻った夏の夜
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「…っ」
暑さのあまり、寝苦しさに堪えきれず、体を起こす。
隣を見れば、その原因であろう人物が。
「う〜」
唸りながらも、確りと腕に抱き付いて体を密着させていた。
互いの肌から滲んだ汗が、混ざり合ってポタリと落ちる。
「やれやれ」
くしゃりと髪を撫でると、やはり汗ばんでいた。唸る程暑いなら、離れなさいな。
「全く」
少し身動いでみても、一向に離そうとしないので、無理矢理引き剥がして、私は水分を補給すべく、出来るだけ音を発てないように、ダイニングへ向かう。
冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し、コップに注いで一気に煽る。少しだけ、暑さが退いた気がした。
二杯目はゆっくり味わおうと考えて、直ぐに温くならないように氷を多めに入れておく。それを飲みながら、少し風に当たろうかと、窓を開ける。昼の暑さとは正反対な涼しげな風が、体を包む。
窓際に腰掛けて、コップに口を付ける。暫く涼を楽しんで、氷も大分溶けて来た頃、そろそろ戻ろうかと顔を上げると。
「のどか…ちゃん?」
寝惚け眼な唯が、ふらふらと此方へ向かってきた。
「起きたの?」
「だって、のどかちゃんいないんだもん」
隣に腰掛けて、再び体を密着させる。水分補給した為か、風に当たっていた為か、然程不快ではなかった。
「唯も飲む?」
「…ん」
飲み掛けの麦茶を見せたのは、必要なら新しいのを持って来ると言う意味のつもりだったのだけど。
「それで、いいよ」
寝惚けてる為か、ゆっくりした動作で、コップを奪う(ひっくり返さないか不安だったから支えてはいたけどね)と、美味しそうに飲み干した。
「ふぅ」
「目、覚めた?」
「ん〜」
「ん?」
顔を覗き込むと、何故か少し不満そうで、首を傾げる。
「もの足りない」
だから、自分の分持ってくれば良かったじゃない。
「麦茶より、こっちがいい」
「…え?」
不満そうから一変、その瞳は獲物を狙う瞳。そして、有無を言わず唇を奪われて。
折角、涼んだ体温を台無しにされて。
なんだか悔しかったから、コップに残った氷水を口に流し込んでおいた。
瞬間、小さな悲鳴が平沢家に響き渡ったのは、言うまでもない。
End
あとがき
夏の夜、ふと汗だくで起きてしまった時にわいたネタ。
鳥取の夏の暑さは異常です(x_x;)