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□笹の節句―願い事と本音と建前―
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「ねぇねぇ、皆はなんて書いたの?」

「ちょっ、覗き込まないで下さいよ」

「お姉ちゃん、梓ちゃん困ってるよ。私のなら、見てもいいよ」

「見せ合うなら、取り敢えず皆が書き終えてからにしなさい」

七夕。
平沢家にて、短冊に願い事を書いている真っ最中。縁側にある家の近くから採ってきたらしい笹には、皆で折り紙で作った天の川やら星の飾りやらが。
後は、短冊のみ。そんなところで、こんなやり取り。

「飾ったら見えちゃうんですから、せめて落ち着いて書かせて下さいよ」

「ちぇ〜」

なんて、唯先輩は口を尖らせてるけど、私の願い事より、和先輩の願い事の方が気になるくせに。
その証拠に、書きながらちらほら視線は隣に居る和先輩に向いてたからね。

「じゃあ、私書けたから先に飾るね」

「あ、待って。私もっ」

既に書き終わったらしく、和先輩は先に笹のある縁側へすたすたと行ってしまい、慌ててそれを唯先輩が追い掛ける。
立ち上げる際、此方を見て微笑んだ気がする。多分、唯は連れてくから、ゆっくり書いてねってそういう意味で。

「気を使わせちゃったかな」

憂と二人きりになって、ようやく落ち着いて文字が書けるようになった。こういうのって、書いてるとこ見られたら、なんか書き難くなっちゃうんだよね。

「そうでもないんじゃない?お姉ちゃん達もちょっとだけ二人きりになれるし」

「それもそっか…よし、書けた」

「なんて書いたの?」

憂も実は気にしてたのか。まぁ、でも憂になら。

「大したことじゃないんだけど、ね」

言って、短冊をひらりと憂に向ける。

『今の幸せが、ずっと続きますように』

「なんか、梓ちゃんらしい」

「そういう憂は?」

「ん〜、ちょっと我が侭かもだけど」


『私は今とっても幸せなので、大好きな人達の願いを叶えて下さい』

「…これ、我が侭?」

「え?違ったかな?大好きな人いっぱいいるから」

いや、憂らしいんだけどさ。我が侭ってのは、自分のこと欲が満たされることばっかり考えてる人のことだから。なんか違うと思う。
ていうか、大好きな人いっぱいって…。

「あ、でも一番は梓ちゃんだから」

そして、いきなり爆弾発言がきたよ。
火照る頬を隠すように掻きながら、私は呟く。

「じゃあ、さ。私とずっと一緒にいられたら、憂は幸せ?」

「勿論っ」

返ってきたのは、嬉しそうな笑顔で。
なら、早くこの短冊飾りに行かないとね。

「じゃあ、私達も飾りに行こうか」

「うんっ」

そうして、私達は寄り添いながら、縁側へ。

「えっ〜!?」

と、縁側から唯先輩のすっとんきょうな声が聴こえてきた。
何事かと、憂と顔を合わせて、早足でそちらへ向かう。

「どうしたの!?お姉ちゃん」

「何事ですか?和先輩」

「いや、それがね」

恐らく大したことではないだろうと、状況を説明してくれそうな和先輩に話し掛けた訳だけど。

「和ちゃんっ、これはあんまりではないですか!?」

泣き面になりかけた唯先輩が、和先輩のらしい短冊をビシッと突き出した。其処に書かれていたのは。

『志望大学合格』

あ〜、うん。現実的で、和先輩らしい。

「大学と私、どっちが大事なの!?」

「どっちとかの話じゃないから。願い事としては無難でしょう?」

「そうじゃなくて、ロマンが感じられないのです」

「ロマンって、そういう唯はなんて書いたのよ」

「フンスッ」

ビシッと並べるように突き出された短冊には。

『あずにゃんと憂がいつまでも仲良しで、和ちゃんとこれからもずっと一緒にいられますように』


気持ちはありがたいけど、これって実質願い事2つなんじゃ?

「願いを叶えてくれるのは、彦星と織姫だからギリギリセーフだよ」

憂は慌ててフォローに入ってるけど、それはセーフなの?

「まぁ、短冊書き直すのも手間でしょうから、さっさと飾っちゃいましょうか」

「あずにゃんも何気にしどいっ」

「まぁ、いいんじゃない?叶う保証なんて、ないんだから」

端から聞けば冷たい言葉。だけど。

―それに、本当に望むことなら、何かに頼るより先に、自分から行動をするべきなのよ―

小声で呟かれたその台詞は、きっと全員に届いてて。
さっきまで不満そうだった唯先輩も、和ちゃんらしいって笑ってた。


きっと、願い事なんて気休めで。
皆、漠然とだけど心の何処かで、信じてる。
星に願わなくたって、私達は。
見えない絆で、繋がってる。って。

ふと、空を見上げると。
一筋の光が視界を横切って行った。

「あ、流れ星」

私の言葉に、皆一斉に顔を上げて。
先ず唯先輩が口を開く。

「アイス食べた〜いっ」

「流れ星にアイスって」

「ロマンがないのはどっちよ」

呆れ顔な私と和先輩に対し、憂は。

「お姉ちゃん、アイスなら冷凍庫にあるよ?」

「おおっ、早速願いが叶ったよ」

そして、皆の分もあるからねって、憂に促されて。平沢姉妹に引っ張られて私達も縁側を後にした。


End





















あとがき

唯は絆を信じてるけど、書かずにはいられなくて。
憂は心から皆の幸せを願ってて。
梓は絆を疑ってはないけど、真面目だから正直な願い事を書いて。
和は、内心では何気に一番皆と一緒にいたいと願いながらも、短冊には無難な願い事書いちゃうイメージ。

そんな妄想により、こんなん出来ました。
久々な上に大変酷いクオリティorz

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