♪♪

□もう恋は始まっていた
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屈託のなく笑う君が。
暖かい笑顔を分けてくれる君が。
好きなことに夢中になる君が。

この好きという感情が、恋と呼ばれるものならば。

もう恋は始まっていた。





――――――





音楽準備室へと歩を進めて行くと、ギターの旋律に混じって鼻歌のようなものが聴こえてくる。
それは紛いもなく、唯のもので、他の楽器の音も他のメンバーの声も聴こえない。

「練習中悪いんだけど」

声を掛けながら、ガチャリと扉を開くと、ソファーに腰掛けてギターを弾いていたのは、やはり唯だけだった。

「あ、和ちゃん。どしたの?」

「律、まだ来てない?」

「うん。今日はりっちゃんとムギちゃん掃除当番で、あずにゃん日直らしいから」

「そういえば澪も、今日は掃除当番だったわね」

なので、一人で練習中なのです。って、唯は得意気に言った。

「頑張ってるわね」

「えへへ〜」

今はだらしなく笑ってるけど、さっき扉をそっと開けて見た時の唯は、本当に楽しそうに、ギターを弾いていた。

最初は寂しいとも感じたけど、今は良かったと思う。
夢中になれるものを、君が見付けられたのなら。

「じゃあこの書類、律に渡しておいて貰える?」


「了解ですっ」

「…ギターに夢中で忘れないでね?」

「大丈夫だよ〜。多分」

「…多分って」

そうして、君はまた楽しそうにギターに触れる。
もしこの感情を伝えたら、きっと君の歩みの妨げになってしまうから。
この気持ちは、胸にしまっておこうと思う。

君が、笑顔でいられるなら。
好きなことに向かって、真っ直ぐ歩んで行けるなら。
例え、隣に居るのが他の誰かでも、幸せになれるなら。

私のこの気持ちが実らなくても。その笑顔を、見守られるだけで良い。
だから、幼馴染みとして。君を支えていける存在であれたらと、ただ願う。

「それじゃあ私、生徒会室に戻るわね」

「うん。わざわざありがとね」

ひらひらと手を振る唯に、軽く手を振って私はその場を後にする。
そして、扉に手を掛けた瞬間。

「あ、和ちゃん」

「ん?」

「今日、帰れたら一緒に帰ろう?」

新しい居場所を見つけてからも、こうやって誘ってくれるのを嬉しく思う。

「分かった。後でメールするね」

そう言うと、唯はとても嬉しそうに笑う。
音楽準備室から出ると、先よりも軽快なメロディが響く。

私と一緒に帰るという約束で、唯のやる気が出たのなら、喜ばしいことだ。
彼女が刻む軽快なリズムのように、少しだけ心も軽くなった気がして。上った時よりも軽やかな足取りで、私は階段を下った。


End




















あとがき
シリアス目指した筈が、なんじゃこりゃな感じにorz

好きなキャラが報われない話とか、やっぱり私には無理なようです(・ω<)←


お題拝借
確かに恋だった

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