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□木々の移り変わる季節、注意報発令
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木々の桜色が、新緑に塗り替えられてきた5月初旬。
私は、今日も平沢家に向かってる。
何だか、連休に(構わず呼ばれれば何時だって)其処に向かうのが、当たり前になってきたな。あの四人で居る部活とは違った暖かい空間、好きだから良いけど。
取り敢えず、手ぶらもなんだから、行き掛けに手土産でも買って行こうかな。
「…あ」
そう考えて、平沢家近辺にて鯛焼きの屋台を発見して、近付いてみると。
「あら、梓ちゃん」
同じことを考えていたのか、和先輩が其処にいた。
「今日は。和先輩」
「今日は。梓ちゃんも唯達にお土産を?」
「はい。いつもご馳走になってますから、お土産くらい買って行こうかと」
「そうなんだ。じゃあ、半分ずつ買って行く?」
「あ、そうですね」
私が平沢家に呼ばれる時は、大抵和先輩も一緒。
でも、辿り着く前に出逢うのは、初めてだな。
「折角だから、何れか食べながら行かない?」
「あ、はい」
和先輩って、真面目そうだけど別に堅物って訳じゃなくて、意外と気さくで接しやすい。
でも、生徒会長が買い食いってちょっと微妙。私は、変に堅苦しい人より、好きだけどね。
「梓ちゃんは何にする?」
「えっと、じゃあ…」
いろんな中身の鯛焼きは、お土産分は売ってる全種類一つずつを割り勘で購入して。今食べたいのは、別に購入。選んだら、何も言わずに奢ってくれた。
「あ、すみません」
「別に良いわよ。割り勘にしたお陰で、使うお金は半分で済んだし」
だから、半分は持ってねって。袋を一つ差し出して、ちゃんと持てたことを確認してから。
「はい。落とさないように気を付けてね」
「…どうもです」
私の分の鯛焼きを渡してくれた。澪先輩も言ってたけど、和先輩って本当にお母さんみたい。
そして、並んで平沢家に向かいながら、鯛焼きを頬張る。
「和先輩は何買ったんですか?」
「食べる?」
何気なく聞いてみると、何の躊躇もなく、目の前に食べ掛けの鯛焼きが差し出された。
逆に、私が躊躇った。
「あ、もしかして、抹茶味嫌い?」
「そういう訳じゃなくて…」
あ〜もう。恥ずかしがってるのが、逆にバカらしくなってきた。照れ隠しで、私はその食べ掛けの鯛焼きにがぶり付いた。
抹茶のほのかな苦味と、餡子の甘味が口に広がる。
「…あ、美味しい」
「そう。それは良かったわ」
「私のも一口食べます?」
咀嚼して、飲み込んで。
自分の鯛焼きを差し出すと。
「う〜ん。味見なら、これで充分かな」
和先輩は、私の頬に手を伸ばして、そっと撫でる。
そして、そのまま指に付いた餡子を舐め取った。
「っ!?」
「あ、ごめん。餡子、付いてたから。そのまま憂と顔合わせたら、恥ずかしいでしょ?」
憂や唯にもやってるから、ついね。って、和先輩は少し照れ臭そうに頬を掻く。
「あ、いや。ありがとうございます。でも」
「え?」
「他の人にこういうことすると、唯先輩が妬いちゃいますよ?」
忠告のつもりでそういうと、和先輩は一瞬きょとんとして、苦笑する。
「そうね。気を付けるわ。相手が梓ちゃんなら、大丈夫な気もするけど」
「どうでしょうか?」
いつだったか。和ちゃん取っちゃやだよ的なことを言われたので、下手したら泣かれそうなんですが。
「泣くよりも、嫉妬して襲われそうな気がするわ」
そう言った和先輩の頬は紅く染まっていた。あぁ、既に経験済みな訳ですか。
唯先輩なら、やりかねないな。なんて考えながら、最後の一口を口に押し込んだ。
「あ、和先輩」
「え?」
和先輩の頬に、少し前の私みたいに餡子が付いているのを発見して、さっきの行為をそのまま返す。
「餡子、付いてました」
「あ、ありがと」
自分は然も当然のようにしていた行為なのに、される側になると恥ずかしそうに紅くなって、ちょっと可愛いななんて、思ってたら。
「「…」」
無言に見詰める視線を感じて、二人揃って振り返ると。
「「…あ」」
不覚にも、それを行なってしまったのが、平沢家の前で。
出迎えてくれようとした二人に、先の行動を見られてしまったらしく。
「…梓ちゃん」
「和、ちゃん」
「いや、憂これはね…」
「唯、取り敢えず落ち着いて、ね?」
しかし、弁明の余地もなく。
「「浮気禁止〜っ」」
「「違っ!?」」
私達はそれぞれの恋人に襲われて、苦しいくらいのバグとキスをされることになる。
解放されて、私達は顔を合わせて苦笑した。
そんな、日が少し高くなった、5月の夕暮れ時。
End
あとがき
梓&和コンビが何故か無性に書きたくなって、こんなの出来ましたf^_^;
この二人は、唯和&憂梓だからこそ絡むコンビなので、カップリングではなく姉妹っぽいような感じで(^_^;)