ハレルヤ
□久遠、君と一緒
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一般人ではなくなった。そうなってしまった時は一言で表すほど簡単なものではなくて。テレビを付ければ記者会見の時の自分が映っている。意外にも世間の反応は真っ二つに分かれた。もちろんみんながファンである越前リョーマの恋人なんてと思う人もいたけれど、6年越しの純愛と受け取ってくれる人もいた。
記者会見のあと私は仕事を退職…というより跡部さんがそういう措置をとっていた。何から何まで記者たちより早く行動してくれた跡部さんのおかげで覚悟していたよりも早く事態は落ち着きを取り戻した。
…そして今。
「…どう?」
「いいんじゃないの」
「何それ」
ふて腐れるように口を尖らすと頬を摘ままれた。変な顔、と笑われるとつられて笑ってしまう。大きな鏡に映る私たちの姿は真っ白。真っ白のタキシード。もちろん身に纏っているのは越前リョーマ。隣にいる私は真っ白のウエディングドレス。
あれから結局リョーマはすぐに日本で暮らすことはできなかった。しかしその何年か後には日本で暮らす手続きをとってくれて今でも海外遠征は多いけれどほとんど日本にいる。そして今日は私たちの大事な大事な日。
「そろそろ行くよ、名無しさん」
その言葉と共に彼の手に手を重ねる。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
静まり返った教会にリョーマのハスキーボイスが響く。心の奥にまで響いたのは私だけかな。そして次は私の番。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
今までリョーマと過ごしてきたことがフラッシュバックされる。告白されて付き合った中高生。アメリカに行くと告げられた卒業式。リョーマの部屋で1人泣いた日。連絡が途絶えた日々。諦めようと決心した日。再開したあの夜。あの記者会見、そしてその夜。
全てが今に繋がっているなんて考えるのは綺麗事すぎるかもしれないけど、それが繋がっているならどの思い出も愛おしく慈しむことができる。
「誓います」
私の言葉もリョーマの心に響いたらいいな。
久遠、君と一緒
(耳に残る讃美歌)
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