ハレルヤ

□他に行く場所なんて無い
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次の日、幸せな痛みを抱えてリョーマの腕の中で目が覚めた。苦しいくらいにぎゅっと抱きしめながら寝ているリョーマが心から愛おしい。でもこんなに近くにいるのにもう少ししたらまたアメリカに渡らなきゃならないんだよね。報道で一時帰国と書かれていたことを思いだす。


…寂しいな。ずっとそばにいたいのに。プロポーズされたのに。またアメリカと日本で離れなきゃならないのかな。また連絡がこなくなってしまったらどうしよう。思い付くのはネガティブなことばかり。



今はそんなこと考えるなと頭を振る。今すごく幸せだもん。なによりもリョーマを信じるって決めたんだから。




「百面相してる」


「….起きてたの?」


今起きたと抱き締める腕を強くする。やっぱりこんなに近くにいるのに。考えてるだけでも目に涙が浮かぶ。こんな情けない顔を見られたくなくて彼の胸に顔を埋めると背中をゆっくりと規則的に叩かれる。





「名無しさん?」


身体痛い?その言葉に首を激しく振る。じゃあ何か不安になった?その言葉にはすぐに首は振れなかった。





「言って。ゆっくりでいいから」


それはまるで泣きじゃくる子供をあやすよう。今すごく幸せなの、幸せだからねと続けた。言えば言うほど自分がネガティブで嫌になる。





「本当考えすぎだよね」


自分が嫌になる、と自嘲気味に笑うとリョーマに頬を撫でられてその手はそのまま私の頬に。そして彼はその不安を拭ってあげようか、と挑発的に笑った。




「どうやって?」


「日本で暮らす」


海外遠征とかはあると思うけどそれでもアメリカで暮らすよりはずっと名無しさんのそばにいられる。


リョーマが日本で暮らす。嬉しいよ、本当にすごく嬉しい。だけどリョーマは強くなるためにアメリカに行ったんじゃないの?海外が彼の輝ける舞台なら私はそれを奪っていいの?





「今までたくさん俺のわがままばかり聞いてもらったよね?もう不安にさせたくないから」


でも…と食い下がる私の唇を唇で塞ぐ。昨日の夜のような甘い甘い口付け。唇が離れたとき、彼がよく聞いてと囁いた。





「アメリカにいた6年間で強くなった。だけど名無しさんが隣にいた方が強くなれる」


と思う、なんて曖昧な言葉は使わない。私の考えすぎてる胸にストレートに届く言葉。私はリョーマの言葉にすぐ揺らぐから信じちゃうよ。





「一般人じゃなくなった名無しさんを追いてどこかに行くわけないから」


「…そういえば仕事!」


「無理。多分仕事場や住所にまで手が回ってる」


迂闊だった。会社にもご近所さんにも迷惑を掛けてしまった。あの時記者が言った、後悔はないですか?ってこういうことも含まっているんだ。





「でももっと早く手が回ってると思うけど」







他に行く場所なんて無い
(君がいれば強くなれるから)



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