ハレルヤ

□愛をしる覚悟
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結局返事をしていないまま、約束の日の夕方になってしまった。初めて跡部さんからの連絡を無視しちゃった。あれから跡部さんからも連絡がこないからどこでどうしていたらいいのかわからない。




職場でも女の子たちが彼の話でもちきり。何を話すのかな?ついに認めるのかな?なんて女子トーク。その話を聞いて私は深いため息を吐く。みんなにとって夢の中にいる人は私の目の前に現れたんだ。大切な言葉とともに。





退社時間になって居づらい職場から急ぐように出る。会社の前に止まっている見るからに高級そうな車。私はその車が誰の車なのか分かってしまった。分かるからこそ、気づかないふりをして通り過ぎたかった。しかしそれはやっぱり叶わない。




「乗れ」


助手席にエスコートされれば断る術もなく車に乗り込む。シートベルトをすると跡部さんは無言のまま車を走らせる。どこに行くのかわからない。跡部さんが作る空気が何だか重くて、質問をすることなく私はただ沈んでいく夕日を見ていた。




「着いたぞ」


真っ暗になり始めた頃、跡部さんが車を止めた。庶民の私でも知ってる日本屈指の高級ホテル。場所が場所だけれどきっとそういうことではないはず。堂々と歩く跡部さんを慌てて追いかけた。




エレベーターに乗って最上階。ドアが開けられた部屋に入ると窓から見える絶景の夜景。さすが日本屈指の高級ホテル。




「それしかねぇけど着替えろ。いつまでも仕事着だと疲れるだろ」


部屋の大きなソファーの上に私好みのワンピースが置いてあった。その言葉に甘えて私は洗面所に着替えに行く。今日の跡部さんは何を考えてるのかわからない。何でこんなところに連れてきたのか。まあ、ほいほい付いてきた私もあれだけど。でもやっぱりそういうことのためじゃない気がする。




着替えて出て行くと跡部さんはソファーに腰掛けてテレビを付けていた。もうすぐ彼の記者会見が始まる。テレビに映っている記者らしき人がマイクを片手に話した。




「今我々は越前選手が記者会見を行うホテルに着きました!彼は一体何を話すんでしょうか?」


…え?そのホテルってここだよね?まさか彼はここのホテルで記者会見をするの?





「ここに座れ」


跡部さんに聞きたいことはたくさんあったけどきっと愚問なんだろう。何も聞かずに私は隣に座った。




たくさんの眩いカメラのフラッシュの中彼が記者会見の場に現れた。一体何を話すのかみんなが注目している。








愛をしる覚悟
(知ることができるのかな)



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