ハレルヤ

□いっそ愛に狂えたなら
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日本やアメリカだけではなく世界的に有名なプロテニスプレーヤーの越前リョーマ。そんな彼にたった今プロポーズをされた。世界中の誰もがYesと答えるだろうし、彼もきっとそれを分かっている。だけど私の答えは違う。





「…ごめんなさい」



びっくり顔。もちろん私じゃなくて彼が。そしてすぐに眉間に皺が寄る。何で?男でもいるわけ?の言葉に首を横に振る。

未練はないつもりだったんだけどきっと心のどこかで比べていた。だから新しい恋人どころか恋愛さえ遠ざけていた。




「じゃあ今名無しさんが思ってること言って」


言いたいことは山程ある。それほど自信はどこからくるのか。何年も連絡さえとっていないのに急すぎないかなど言い出したらキリがないくらい。だけどまとめた答えは出た。




「信用、できない」


突然帰ってきてプロポーズって一般的に考えておかしい。何年も連絡がない人を待ち続けていたようなドラマティックな人生はもうたくさん。これからはもっと普通の恋愛をして普通の人生を歩みたい。





「名無しさんは俺のことどう思ってるわけ?」


嫌い?なんて聞き方はずるい。首を振ることができるわけない。忘れたつもりだったけれど嫌いにはなれなかった。あんなに大好きだった人だもん。そして彼が追い打ちをかける。





「俺は名無しさんのこと好きなんだけど。だから結婚したい」


ぐらぐらと揺れる。彼がアメリカへ行くと聞いたときも許せないけど許しちゃったんだっけ。あの頃から何にも成長してないんだなぁ。





「じゃあ質問を変える。どうしたら信用する?」


「それは分からないけど…」


何かをしてほしいっていう願望はない。むしろそっとしておいてほしい。でもきっとそれさえも叶わない。今この瞬間に彼がいることで既に普通とはかけ離れているんだから。





「…わかった。とりあえず今日は帰るから」


パタンとバーから出て行った。たった一人になった私はさっきまでのことを振り返って見る。帰ってきてプロポーズされて断って。これでよかったのかな。素直に受ければよかったのかな。








いっそ愛に狂えたなら
(簡単に答えを出したのかもしれない)



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