ハレルヤ
□知らない始まり
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先日同僚の子が寿退社。お先に!なんて言葉を私に掛けて幸せそうに退社していった。そのせいで私のところにはその人が受け持っていた仕事がまわってくる始末。ここのところ本当に忙しくて家に帰ってもテレビもつけずにすぐ就寝。気がついたら朝の生活。
ようやく落ち着いた頃に振り返ってみた。このままキャリアウーマンになっちゃうのかな。いつの間にか出世して仕事も増えて遊ぶ時間もなくなって。こんな生活をしていたらいつの間にか婚期を逃してそう。うわあ、考えたくもない。でもそれが現実だ。はは、と空笑いをしてみてもただただ虚しいだけ。
ピリリと久しぶりに鳴った携帯電話。画面を見てびっくりした。その人から連絡がくるのは本当に久しぶりだったから。
「もしもし、俺だ」
「お久しぶりです、跡部さん!」
元気そうだな、と電話越しで跡部さんがちょっと笑った。今は誰から連絡がきても嬉しいけど、跡部さんは久しぶりだから余計嬉しい。
「明日の夜、時間空いてるか?」
ちょうど仕事が落ち着いたタイミング。断る理由なんてない。大丈夫です!と返せばそうかと少し残念そうな声がした。
自分から誘っておいて嫌なわけはないよね?それともただの社交辞令だったりするのかな。聞いてみようかな。
「じゃあ8時に以前行ったバーに来い」
あ、わかりましたと返して電話が切られた。あのバーにいくのは久しぶりだ。跡部さんにあの人を忘れると言った場所。庶民の私が簡単に行けるわけないけど何となく避けていた場所。
知らない始まり
(あ、聞くタイミング逃しちゃった)
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