ハレルヤ

□刹那的恋情
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「久しぶりだな」


空港を出たところの車の前で待っていた人…もとい、跡部さんにそうっすねと返す。何でこの人がここにいるんだろう。そんなことを聞くだけ愚問な気がするからやめとく。



乗れと命令口調で言われるとさっきのイライラと重なったが車に乗り込む。走ってすぐ、何で帰ってこなかったんだとマスコミと同じことを聞く。特別な理由なんてないっすよと言うと納得のいってなさそうな表情をした。跡部さんの言いたいことはなんとなく分かる。それでも言わない理由もわかる。





「あの報道、こっちでも広まってるぞ」


そんなの知ってるし、空港ですでに経験した。それについては何も返事をしないでいると車内に沈黙が流れた。





「聞かないのか?」


「言わないんすか?」


しばらくして沈黙が破られる。この会話に主語は必要ない。何のことを言っているか分かるから。




「もう一度聞く。何で帰ってこなかった?」


「そう思ってるならアメリカに連れていくぐらいしたんじゃないの?」


跡部さんが何でそれをしなかったのか分かる。さっきから分かるって思ってばかりだけど本当に分かる。俺も同じ状況ならそうしてたと思うから。




「望んでなかったからだ」


へぇ、と返してはみたものの喉の奥がグッと詰まった感じがした。それが気づかれたのかは分からないが、跡部さんが携帯電話を耳にした。俺だという発言に返事をした声に嫌でも反応する。








刹那的恋情
(大きく息を吸って吐く)




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