ハレルヤ
□残された秘めごと
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美味しい食事を終えるといつもはこのままタクシーを拾ってもらって帰るのに、今日は違う。跡部さんがまだ時間あるか?と聞いてきた。ありますと答えると、これまた普通の社会人には足を踏み入れることのない高級そうなバーへ。
「さっきの話の続きだが、きついこと言って悪かったな」
きついことと言われて私の頭にはクエスチョンマークが浮かぶ。もしかして将来のことを考えて決めろって言ったこと?
「きつくなんかないです。そうしないとなって思いました」
ここ5、6年いろいろな人にいろいろなことを言われてきた。もうやめなよとか自然消滅だとか。最初の頃は別に関係ないと強がっていたけれど、もうそろそろ分かる。今まで言ってきた人がどれほど正しいことを言っていたか。だから跡部さんが言うことも正しいことだと思う。
…でも頭で分かっていても心がついてこない。
「アメリカに連れてってやろうか?」
跡部さんはたまにそう言う。大学生だった頃に比べて社会人なのでお金を貯めて行こうと決心すればアメリカに行ける。でも行かない。そんなことをしたって意味がないもん。格好悪いけど私にも意地があるから。行きたくなったらいつでも言えと跡部さんが言ってくれる。
「まあ、今行ってもな…」
「今何かあるんですか?」
私が知らないと分かると跡部さんは知らない方がいいの一点張り。結構粘ってみたけど結局何の話なのか教えてくれなかった。近い内に知るとだけは教えてくれたけど。
残された秘めごと
(何だったんだろう)
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