ハレルヤ

□一瞬、世界に二人だけ
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結局そのまま朝まで眠ってしまったらしい。寝ぼけ眼をこすりながらいつものように携帯に手を伸ばす。朝起きたら無意識に携帯を見るなんて依存症なのかな、でも今時普通か。




お、メールが来てる。そういえば昨日送ったんだ!


わくわくしながら期待して見てみると送信者は桃先輩。みんなに言ったからな!という内容だった。思わず朝から溜め息が出てしまう。いや、桃先輩からのメールを見たからじゃなくて開くまでちょっと期待してしまったから。




…こんな気分だし、起きたくないなあ。まだ春休み中だもん。寝ててもいいかなあ。たまにはいいよね。



もう一度ごそごそと布団に潜り、目を閉じる。きっともう一度起きた時には返事がきていることを願って。付き合っているはずなのにこれじゃあまるで片思いみたいだ。リョーマのばか。




その気持ちが通じたのか眠りにつきそうになったとき携帯の音が鳴る。この音はメール受信ではなく電話の音。慌てて画面を見ると待ちに待った彼の名前。




「もしもし!リョーマ?」


「朝からテンション高いね」


そっち朝でしょ?と言うリョーマはいつも通りのテンション。まだ2週間くらいしか離れてないのに眠気が吹っ飛ぶくらい既に懐かしい。リョーマが相変わらずすぎて可笑しい。




「桃先輩からの連絡を無視したんでしょ?」


「あと英二先輩のも」


うわ、ひどい。先輩たちが優しいから許されることなんだからね。だって面倒くさいからなんて一言で反省しないリョーマを甘やかしすぎだと思うけど。それは私も同じか。





「アメリカはどう?」


「普通」


「毎日テニスやってるの?」


「そのために行ったんだし」


問題です。彼は会話をする気があるのでしょうか。正解は無くはないと思うけど盛り上げるつもりはないが正しい。遠距離恋愛になったから甘い言葉を囁く人ではないみたいです。





「そういえば何で電話くれたの?」


「名無しさんの声聞きたくなったから」


再び問題です。これは天然なんでしょうか。それとも計算なんでしょうか。どちらにせよ私はどっぷりと彼に酔っている。これが世間でいうツンデレってやつなのでしょうか。





「あまり連絡できないかもしれないけど変なこと考えないでね」


あんたが落ち込むといろいろと面倒くさいから。


彼氏が彼女に面倒くさいとは何だ。だいたいの原因はリョーマのせいなのに。でも昨日の夜は自分でも面倒くさいなと思ったからきっとその通りなんだろうな。




「それとたまには俺の家に遊びに行って」


「リョーマって家族思いなんだね」


「そうじゃなくて、遊びに来ないって連絡が来たんだよね」


あ、なるほど。でもその言葉に甘えて本当に行ってもいいのかな。リョーマもいないのにリョーマの家に行くなんて変な感じ。そう伝えると、何でもいいから行ってと言われてしまった。じゃあ近いうちにお邪魔しよう。




じゃあそろそろ切るから、と彼が言う。寂しいけど仕方がない。少しでも電話できたことを喜ばないと。




「…名無しさん」


さっきといい、今といい、改めて彼に名前を呼ばれるとドキッとする。電話だから余計ドキッとする。何?なんて平然を保ってるけど電話の向こうでバレているんだろうな。





「好きだよ」


私の手のひらからするりと形態が落ちた。ここがベットの上でよかった。慌てて拾って再び耳に当てると慌てすぎと笑われた。いやいや慌てるよ!だって滅多にそんなこと言わないリョーマがそんなこと言うんだから。遠距離恋愛ってすごい。




「私もリョーマのこと好きだよ」


「ん、知ってる」


急に力がふにゃりと抜けた。遠距離恋愛でも変わらない。このまま変わらないでいたいな。







一瞬、世界に二人だけ
(そう錯覚するほど)



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