リョーマがアメリカに渡ってもう一週間。行ったその日だけアメリカに着いた、と一通メールが来ただけ。仕方がないから慣れたといえば慣れた…いや、慣れてない。いまだに彼の面影を探している。またいつかは会えるんだけどやっぱり寂しい。
そういえばまだ先輩たちにリョーマのこと話してないんだった。全員に言うのは大変だから誰に言ったら伝わるかな。1番話しやすいのは桃先輩なんだけどな。
でも本当に早く言わなきゃ。もう一週間も経っちゃったんだから。
うーんと悩んでいると夜にピリリと機械音が鳴る。画面には彼の名前。噂をすると何とやらなんて昔の人はすごいことを知ったものだ。
「久しぶりだな!ちょっと話があるんだけど」
「私も桃先輩にお話したいことがあったんです!」
「じゃあ今近くに来てるから外に出ててくれ!」
そう言うと桃先輩はピッと切った。これでやっと言えるんだ。どんな反応するかな。申し訳ないけどちょっとわくわくしながら外に出て桃先輩を待つと嵐のようにすぐに来た。
「おー!久しぶりだな!」
髪の毛をわしゃわしゃと撫で回される。久しぶりに見た桃先輩はぐんと大人っぽくなっていた。でも大きな笑顔は変わらないからホッとする。
リョーマもだけどみんな駆け足で大人になってるみたいで少し寂しい。そんなことを言ったら子どもだな!なんて言われるから言わないけど。
「桃先輩、お話しってなんですか?立ち話もなんですから部屋にどうぞ」
「そんなことしたら俺もお前も越前に怒られんだろ!」
そうかな、リョーマ怒るのかな。でもずっと前、名無しさんは鈍感すぎるって怒られたことがあったような、なかったような。
「話って言うのは越前のことなんだけど、あいつ今どこにいるか知ってるか?」
電話もメールもしても何の返事もないから、と桃先輩が続けた。あ、その話だったんだ。というか先輩からの電話やメールを無視したら駄目でしょう。あとでメールを送っとかないと。
「リョーマは今アメリカに居るんです。高等部卒業式の後すぐに行っちゃって…」
冗談だろ?って笑われたけどこれが冗談じゃないんです。どうやら空気感で冗談じゃないことが伝わったみたいだからよかった。桃先輩が出した結論は、越前だったらおかしくないな。
「帰ってくるまで待ってんのか?」
「そのつもりです!」
やっぱりみんなそれを聞くんだね。偉いな!とまた桃先輩に髪の毛をわしゃわしゃと撫で回された。偉いのかな、みんな恋人の帰りを待つものじゃないの?でも褒められると嬉しい。
「じゃあ近いうち、越前が有名になるかもな」
確かに。リョーマならあっという間に勝ち上がって報道されて有名になりそう。それだったらそのほうがいいな。だって顔も見れるから安心感があるもん。
「じゃあ俺、そろそろ帰るから」
「あの、みなさんにリョーマのこと言っておいてもらってもいいですか?」
任せとけー!とペダルを漕いで去って行く。爽やかだ、実に爽やか。本当にいい先輩!あ、リョーマにメールしないと。
風が横切る夜道
(あっという間に)
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