ハレルヤ

□眺める今日
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あーあ、本当に行っちゃった。私は空を眺めていた。隣を見渡してもリョーマの姿はない。今彼は飛び立った飛行機の中。私はこれから1人で帰らなくてはならない。帰れるのかな。




「名無しさんちゃん」


空港を出て声を掛けられた方を見るといつも通りの格好をした南次郎さんがいた。リョーマを見送りに来たのかな。でもリョーマ行っちゃったんだけど…。




「あいつの見送りじゃねーぜ。名無しさんちゃんを待ってたんだからな」


「どうしてですか?」


「1人で帰るの寂しいんじゃねーかなって」


うわ、南次郎さん男前。リョーマは嫌そうにしてるけど南次郎さんはとってもいい人。年齢が近かったら惚れてるかもしれないけど、多分惚れてない。




「なーんてリョーマが送ってくんないって言ってきたんだけどな!」


ごめん、リョーマ。私が惚れるのはやっぱり貴方しかいないみたいです。



南次郎さんはケラケラと笑ってとりあえず乗んな!と助手席のドアを開けてくれた。素直に乗り込んで南次郎さんが車を走らせる。



どんどん遠ざかっていく空港。リョーマはもっともっと離れてしまったんだろうな。少しでも寂しいって思ってくれたかな。





「名無しさんちゃんはあいつの帰りを待つのか?」


「そのつもりです」


それに待っててなんて言われなくてもきっと待ち続けるはず。先が見えないから怖いけど待ちたい。そう言ったら健気だな!って南次郎さんに笑われた。




「南次郎さんはリョーマのこと心配ですか?」


「いーや。何とかなんだろ」


もうそれなりの大人なんだからなと南次郎さんは真っ直ぐ前を向いて言う。その横顔はやっぱりリョーマとそっくり。そんなこと言ったらリョーマは嫌がるかな。





「リョーマが居なくても遊びに来てくれないとおじさん寂しいからなー」


「本当ですか?」


そう聞くと本当だって!と即答された。本当かどうか分からないけど素直に嬉しい。でもリョーマがいないんだって実感して寂しくなっちゃいそう。そこは頑張らないと。







眺める今日
(あ、みんなに言わないと)



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