ハレルヤ
□我が儘プリンスのお願い
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空港に着いたとき、大変なことに気がつきました。私もしかして帰り道ひとりぼっちじゃないでしょうか。今更気づいたの?って隣で笑ってるリョーマが帰りにはいないんだもん。私、ひとりぼっち。というか今気づいたんだけど、この状況おかしくない?
「他の人は来ないの?」
リョーマパパもママもいなければテニス部の人たちもいない。むしろ私しかいないんだけれど。リョーマの見送りをしないような薄情な人はいないはずなのに。
「親とあんた以外に言ってないから」
…薄情なのはこいつでした。あとでみなさんに謝り歩かないと。
越前リョーマはアメリカへ旅立ちましたっと。そうです、海を越えて飛行機を使わなければ行けないあのアメリカです。あと時差もあることも伝えないと。
「名無しさんがいればそれでいい」
珍しく甘い言葉を囁くのは黙ってたことを反省してるから?急にそんなことを言われると心臓が保たない。
「どれくらいで帰ってくるの?」
「分からない。1年かもしれないし、10年かもしれない」
気が遠くなるような年数。その間私たちはどうなってしまうんだろう。成人したときも大学を卒業したときもリョーマは隣にいないのかな。それよりもそこまで私たちは…。
「言ってほしい?」
「何が?」
「待っててって」
普通そんなこと聞かないのに。私、リョーマに待っててって言ってほしいのかな。そう言われたら待ってるのかな。先のことなんか分からないけれど、多分。
「待っててよ、名無しさん」
「うん、待ってる」
言ってほしいなんて言ってないのに。でも何となく伝わったのかな。
リョーマが乗る便の案内が流れた。嫌な感じに実感する。これから離れ離れになっちゃうことを。ぎゅーっと胸が詰まって泣きそう。隠そうと思っても遅い、もうとっくにバレてる。
その気持ちを消してくれるようにぎゅっと抱き締めてくれて甘いキスが降りてくる。みんな携帯を片手に忙しそうに歩いているから私たちを見る人なんて誰もいない。
「じゃあ、行ってくるから」
ゆっくり唇が離れたあと、再び抱き締めてお別れの合図。名残惜しいけれど仕方がない。だって越前リョーマだもん。彼は自分の決めた道を行く人。
我が儘プリンスのお願い
(いってらっしゃい)
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