クロスロード

□幸せの真ん中へ
1ページ/1ページ





…どうしよう、ブン太に告白されてしまった。幼い時からって言っていたけど全然気がつかなかった。じゃあ赤也くんの相談をしたとき、ブン太はどんな気持ちだった?鈍すぎる自分が嫌になる。こんなの自業自得。
それでも誰かを頼りたくって、美音に電話しようと携帯電話を手にとった。その瞬間電話の着信音が鳴り響く。映し出されている名前を見ると、赤也くんの文字。





「もしもし、名無しさん先輩!ちゃんと丸井先輩と帰りました?」


『うん、送ってもらったよ』



どうしよう、こういうのって言った方がいいの?でもちゃんと断ったから言わない方がいいの?





「丸井先輩と何かあったんすか?」


『な、何でそう思ったの?』


「何となく名無しさん先輩が変だなーって。今からそっち行きますね!」


『え、あ、ちょっと…!』



私の声は携帯電話の機械音で遮られた。
今から来るって言われても…。でもちゃんと断ったから言っても大丈夫だよね。そう考えていると、また電話が鳴った。赤也くんが家の近くの公園で待っているらしい。私は軽く着替えてその公園に向かった。





『…お待たせ』



街灯に照らされているベンチに赤也くんが座っていた。彼を見た瞬間、なぜか胸が切なくなった。





「何があったんすか?」



いざ彼を目の当たりにすると、嘘でも何もなかったよ、なんて言えなかった。





『ブン太にね、告白された…。でもちゃんと…っ』



あれ、私ってちゃんと断ったっけ。そういう風に見たことない、って言っただけだった?でもそれって立派なお返事だよね。






「それって俺の方を選んだんすよね?」



彼の不安そうな顔が辛くて私は大きく頷いた。そうすれば、良かったと大きな笑顔が返ってきた。うん、これでいいんだ。せっかく赤也くんのこと好きになったんだもん。間違っているはずがない。





『不安にさせてごめんね…』


「大丈夫っす!名無しさん先輩がいれば」



まるで存在を確認するようにギュッと抱き締められた。私も力を入れて抱きしめ返す。大丈夫、この温もりを失わない。





「俺、あんたを失いたくない」



そう言って重ねられた唇は切なくて無性に泣きたくなる。何でそんな気持ちになったかは考えないでおこう。






幸せの真ん中へ
(迷わず進め)




-continue-





.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ