クロスロード
□微糖ミルクティー
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あー、もう朝からイライラだ。朝練終わりに赤也から聞きたくもない報告を受けた。しかも耳元で。
「俺、昨日名無しさん先輩とキスしたっす!」
内緒っすよ!って赤也が笑った。俺も笑ったつもりだけど、できていたのかな?これはマジで嫌がらせだろぃ。赤也は分かってやってるのかよ。違ったら怖すぎだろぃ。
「幸せそうだな」
「当たり前っす!丸井先輩も早く彼女作った方がいいっすよ」
「余計なお世話…」
本当に余計なお世話。というか、お前が奪っていったから相手がいないんだよ、なーんて言えねぇから赤也が知らないのは仕方がないんだけど。知らねぇから罪じゃないっていうのも何かな。むしろ罪じゃないんだけど。
「あ、丸井先輩に頼みたいことがあるっす!」
「何だよ」
「俺、明日遠足でいないんで、名無しさん先輩のことよろしくお願いします!」
「…遠足?」
「だから送るのよろしくっす!」
「…おう」
おいおい、承諾して大丈夫か、俺。この機会ってチャンスなのか、それともピンチなのか分からない。
赤也がじゃあお先っす!と赤也が意気揚々と部室を出て行った。めちゃくちゃテンション上がってんな。
「よかったのう、ブンちゃん」
仁王がニヤニヤしながら怪しげに近づいてきた。盗み聞きかよ、って言ったらプリッと言われて流された。
「よくねぇだろぃ。…どうしたらいいんだよ」
名無しさんを好きだってこと一応隠していたつもりだったのに、仁王にバレてから素直になっている。自分でも驚くくらい。早くこうなればよかったんだけどな。
「自分で考えんしゃい。まあ、無駄にしないことを祈るぜよ」
クックックと仁王が喉を鳴らして部室を出た。あいつ、本気で楽しんでる。本当に性悪。
無駄にするも何も、一日元に戻るだけだ。それだけで何もない…はず。
微糖ミルクティー
(甘さなんてない…はず)
-continue-
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