クロスロード
□ここが僕等の境界線
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朝の約束通り、赤也くんの部活が終わるまで教室で待っている。ついこの間まではブン太を待っていたのにな。あ、そういえば赤也くんに告白されたとき、ブン太がいなくて赤也くんと帰ったっけ。…あれ、何でだろう?
「名無しさん先輩、お待たせっす!」
『お疲れ様〜』
ガラッと教室のドアを開けて赤也くんが飛び込んできた。どうやら彼は走ってきてくれたみたいで手の甲で額の汗を拭っている。
『ゆっくりでもよかったのに』
「早く名無しさん先輩に会いたくて」
きゅーん。何だ、この可愛らしい子。胸の奥がぎゅーっと掴まれた気分。こういうのを好きっていうのかな。よく分からないけど、そうなのかも。
「今、きゅんってきました?」
『え、何で分かったの?』
「そうだといいなーって思ったから」
えへへ、と笑う赤也くんにまたしても掴まれた心臓。いつも知っている後輩なのに、彼氏って名前がつくだけでこんなにも違う人に見えるのかな。
「じゃあ、帰りましょ!」
彼の言葉に頷いて私は机の上にあるバッグを肩に掛けた。歩き出そうとしたのに赤也くんは歩かない。
『どうしたの?』
「あの、手繋ぎたいっす」
ズボンでゴシゴシと手汗を拭ってから赤也くんの左手が出した。私はその手に自分の右手を重ねると、彼がギュッと握る。
「俺、すっげぇ幸せっす!」
『私も幸せだよ』
何か赤也くんの笑顔を見ているだけですごい幸せ。彼氏がいる子ってこんな思いしているんだなー。
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