クロスロード

□傍観する臆病者
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部活が終わって、いつも通り名無しさんを迎えに行こうすると赤也が話しかけてきた。




「俺も一緒に帰りたいっす!」


ああ、こいつ頭いいのかもしんねぇな。別に何人で帰ってもいいんだから。しかも頑張れ、なんて言ってしまったから断る理由がなくなった。





教室に向かう階段を上がるたびに、赤也のテンションが比例して高くなる。一緒に帰るのがそんなに嬉しいことなのか?俺には当たり前になったから分からない。






「ブン太のことなんか好きじゃない!」



最後の階段を登り終えて教室が見え始めたとき、そんな言葉が聞こえた。別に知らない奴だったら立ち止まったりしない。でもその声は名無しさんだったから、その場から動けなくなった。
俺は今どんな顔をしているのか、赤也はこんな俺を見てどう思っているのか。そんなことを考える余裕はなかった。





少しした後、俺たちの教室から何人かの女の子たちが出てきた。しかしこっちには気づかず、反対方向に向かっていく。その光景を見た瞬間、赤也が走り出して教室に駆け込んだ。





「名無しさん先輩!」



赤也の大きくて必死な声が廊下中響き渡った。一体何なんだよ。全く状況が読めねぇんだけど。
しかし分かっていることがただ一つ。名無しさんは俺のことが好きじゃねぇ、ってこと。俺の心を砕くにはそれだけで充分だ。その上、教室に行って名無しさんを見て一緒に帰るなんて出来ない。
俺は上がってきたばかりの階段を1人で下った。






傍観する臆病者
(傍観すら出来ねぇ臆病者)





-continue-





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