クロスロード

□先延ばしにした言葉
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『ブン太、私どうしたらいい…?』



そんなもん知らねぇし、知りたくない。名無しさんが赤也に告白されたなんて。あいつも早いなー。あー、俺が遅いのか。







『ブン太のことなんか好きじゃない!』



その言葉を廊下で聞いたあと、俺は動けなくなった。しかし赤也が名無しさんのところに走っていった音で我に返る。俺は赤也の"名無しさん先輩!"と叫ぶ声を背にして1人で家路に急いだ。別に急ぐ必要なんてあるわけがなかったのに。





そしてその日の夜に名無しさんからの電話。




『話したいことがあるから今から行ってもいい…?』



その声は微かに震えていて、俺は廊下でのことも忘れてちょっとした期待感まで持ってしまっていた。今考えると俺はアホでしかない。全然天才的じゃない。
そして家に来た名無しさんが赤也に告白された、と。困ったような恥ずかしいようなそんな表情を浮かべて。そして冒頭のセリフ。




どうしたらいい?なんて聞かれたって分からない。そんなの俺が決めることじゃなく自分で決めることだろぃ。





「赤也のことが好きだったら付き合う。それだけだろぃ」



何年も勇気が出ずに告白を保留にしてきた俺が止める権利なんてない。





『だって好きとかよく分からない…。好きな人はいっぱいいるもん』



LoveとLike。好きには何種類かある。それが区別出来ないらしい。今までで恋愛感情ってもんが湧いたことないのかよ。





「付き合ってみたら分かるだろぃ」


『そんな感じでいいの?』


「いいんじゃん?」



あーあ、何言ってんだろうか。辛いとか辛くないってレベルじゃない。虚しい…そんな言葉が合っている気がする。





「わかった。じゃあ赤也くんに電話してもいい?」



おいおい、完全に嫌がらせだろぃ。名無しさんはそんなこともつゆ知らず、赤也に電話をかけ始めた。きっと携帯画面を見た瞬間、テンション上がってんだろうな。さっきの俺と同じで。





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