クロスロード
□欲望の赴くままに
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「名無しさん先輩!」
最近赤也くんが昼休みの時などにうちのクラスによく来る。ブン太や仁王じゃなくて、どうやら私にらしい。
「また何かあったら言ってほしいっす!駆けつけるから」
彼はたまにその言葉を私の耳元で囁いて帰る。心配症だなあ、と思いつつ、気に掛けてくれる素直に嬉しい。
「名無しさん、赤也くんにするの?」
美音がニヤニヤしながら聞いてくる。仁王もさりげなく近づいてきて美音に便乗する。別にそういうのじゃないのに。
『赤也くんは可愛い後輩だよ。弟みたいな感じかな』
「赤也がそれを聞いたら泣くぜよ」
え、何で泣かれちゃうの。よく分からないけど、赤也くんの前では言わないように気をつけよう。
「別に満更でもないんだろぃ」
離れたところにいたはずのブン太が話しに加わってきた。移動してまでそんなことを言いに来たのだろうか。最近やけに赤也くんの話しになると機嫌が悪くなる。
「丸井って彼のこととなると、やけに突っかかってくるのね」
あ、美音と以心伝心。気になっていたのは私だけじゃないんだ。仁王も気付いているのかな、と見てみれば笑っていた。相変わらず謎な人。
ブン太は美音に言い返すこともなく、仁王を怒ることもなく、おとなしく席に戻っていった。一体彼は何がしたかったんだろう。
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