クロスロード

□冗談と嘘
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最近更に赤也がうざい。慕ってくれる可愛い後輩のはずなのにうざい。俺って思っていた以上に心が狭くて嫉妬深いのかも。自分のものでもないのに。





「名無しさん先輩って本当に可愛いっすよね!」



そんなこと言われなくたって何年も前から知っている。だけど口に出したことは一度もない。だから思ったことをすぐ口に出す赤也が羨ましくなる。





「お前、女の趣味悪いな」


「そうっすか?すごい可愛いと思うんすけど」



赤也の女の趣味は悪くない。しかし一つだけ、俺と同じってところは悪い。





「そこまで言うなら付き合えばいいだろぃ」



ただの冗談。でも俺は本当にばかだと思う。何で思ってもいないことがペラペラと出てくるんだろう。




「え、いいんすか!?俺、結構本気っすよ!」



丸井先輩のお許しが貰えるなら頑張ろう!と赤也の目がギラギラした瞬間、嫉妬なんかではなく後悔をした。頭を抱えて蹲りたいくらい。でも足に力を入れて気丈に振る舞う。




「勝手にしろぃ」



ああ、これで後には退けなくなってしまった。きっと次に言われる台詞で終わる。





「丸井先輩、名無しさん先輩とのこと協力してくださいね!」



ほら。こいつ、わざわざ名前までつけやがって。嫌味なのか、天然なのか分からない。どっちにしたって俺は協力しなければならないらしい。





「それでお願いがあるんすけど、いつも名無しさん先輩を送っているの、俺がやっちゃ駄目なんすか?」



ぎくっとした。そんなことを願われると思っていなかったから。





「あれは名無しさんの母ちゃんが決めたことだ。悪いけど俺は名無しさんの母ちゃんに逆らえねぇ」


「何で?」


「ちょっとしたトラウマ。俺か名無しさんに恋人が出来るまで頼まれてんだよ」


「じゃあ、俺が名無しさん先輩の恋人になったら俺が出来るんすね!」


「当たり前だろぃ。だから頑張れ」




どうやら俺はこれだけはどうしても譲れなかったらしい。情けないけど、精一杯の防御だ。これからたくさん傷付くかもしれないし、これくらいはいいだろぃ。







冗談と嘘
(いつまで言えばいいんだ)




-continue-





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