クロスロード

□天然小悪魔の異名
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あーあ、最近気を付けていたのに。まだまだ注意不足だったかな。



「ちょっと聞いているの?雨宮さん」



ええ、聞いてますとも。ブン太の前では高いのに今すごく低いその声を…なんて言う勇気は到底ない。現実は漫画のようにヒロインがキレたりしないんです。



助けを呼びたくても今は放課後。しかも場所は屋上に上がる階段。こんな時間にこんなところ通る人なんていないんじゃないかな。






「最近は仁王くんにも近づいているし」



バッサバッサのつけまつげにグロスで濡れたテカテカの唇の女の子たち。ブン太と仁王はこういうのがタイプなんだろうか。うーん、聞いたことないかも。




「近づかないで、って何回言ったら分かるの?」



何回言われたって分からない。あなたたちがブン太の彼女なら分かるけど違うんだもん。そんな命令を聞く義理はない。

というか、そんなことしてブン太に振り向かれると思っているの?今日はついにそう言ってしまおうかと大きく息を吸い込んだ瞬間、空気を読めるんだか読めないんだか分からない人物が現れた。





「あれー、何やってんすか、名無しさん先輩」



…何とか赤也くん。ブン太がいつも名前でしか呼んでないから名字忘れちゃった。




「赤也くん!」



あ、女の子たちの声色が変わった。そっか、赤也くんもテニス部だもんね。テニス部には嫌われたくないよね。





「名無しさん先輩、俺の練習見に来てよ!」



えっと、この子は天然?それともわざと?わざとだったら怖いわ。
女の子たちと目を合わそうともしないなんて。今、赤也くんのその目の端に映っている?女の子たちの屈辱的な顔。





「はいはい、行きましょー!」



ぐいぐい腕を引かれて私たちは階段を後にした。もう、後が怖すぎます。






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