クロスロード
□それは世界一我が儘な感情
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あれからブン太とはずっと一緒にいる。最初は赤也と別れてすぐにブン太と付き合うことで女の子たちからの批判はすごかった。しかしそれを鎮めたのは幸村くんらしい。どんなことをしたの?ってブン太に聞いたけど、知らない方がいいの一点張り。だから未だに真相は闇の中。
「名無しさん先輩!俺、まだ諦めてないっすからね!」
最近の赤也の口癖はもっぱらこれ。あ、ちなみに彼から悔しいから赤也って呼んでほしいっす!って言われたから赤也にした。彼には頭上がらないし。
「だーから、名無しさんは俺のなんだよ!」
そのことに今、叫んでいる隣の彼は納得いかなかったみたいだが。とりあえず知らん顔した。
「やっぱりこうなると思っていたぜよ」
「私も」
仁王に美音が珍しく同意した。何だかんだ言って仲いいよね、って言おうとしたけど怖いからやめておこう。
「ほら、名無しさん!来い」
『え、あ、ちょっと…っ』
急にぐいっと引っ張られて彼の胸へ飛び込む。結構体重を掛けたのに受け止めてくれるブン太に少しだけ見惚れたことは秘密……にしておきたかったけど、彼は変なところで勘がいい。
「今、見惚れてただろぃ」
『そんなわけないじゃん』
慌てて否定したけど、どうやら意味がなかったらしい。
「いや、見惚れてたっすよ」
「見惚れてたぜよ」
「見惚れてたわ」
ほら、とブン太が得意そうな顏をした。だって見惚れるのはしょうがないじゃない。
『ブン太のことが好きなんだから』
そう言うと、人がいるのにも関わらず甘ったるいキスが降りてきた。もう、なんて言いながら本気で拒否しないのはやっぱりブン太のことが好きだから。
それは世界一我が儘な感情
(交わって好きになった)
-END-
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