クロスロード
□自惚れ屋さん
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保健室を出たあと、俺は少し歩いてから壁に寄りかかってはぁー、と溜め息を吐いた。心に余裕を持とうとしたけどすっげぇ焦ってた。
「でもちゃんと素直になってるよな…」
やり方はまるで天才的ではなく、ただの凡人。それでもいい。君に思いが伝わるなら。
「よし、部活行くか」
とりあえず教室に戻らないと。俺は階段を上がっていく。時間的にはいい感じ。これで先生に会わなかったら天才的だな。
「お、来たのぉ」
「仁王、待ってたのかよ」
みんなが帰ったのか誰もいない教室に仁王がヒョロリと立っていた。それよりも先生に会わなかった俺ってやっぱり天才的だろぃ。
「どうじゃった?」
「何が」
「ものに出来たんか?」
こいつがたまに言うストレートすぎる言葉は意外と嫌いじゃない。何を考えているか分かるような単純な奴の方が楽じゃん。
「名無しさんが赤也と話すって」
「別れ話か?」
「分からない」
そう言えば何を話すか聞かなかったな。別れ話なのか、俺にキスされたことを言うのか。どちらにせよ赤也に恨まれるのは確かだ。
「俺、確実に赤也に嫌われる」
「覚悟しとくぜよ」
そう言って仁王は教室を出た。俺も慌てて後を追う。あー、部活で赤也にどんな顔して会えばいいんだろう。
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