クロスロード
□二人きりの保健室で
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着いた保健室には誰もいない。こういう時の為に校医って奴がいるんだろぃ。
とりあえず名無しさんをベッドに寝かせた。額に滲んでいる汗をタオルで拭き取ってやる。
『ブン…太?』
「朝からだったんだろぃ?」
『何で、…分かったの?美音以外には気づかれなかったのに』
それは多分俺が名無しさんのことを見過ぎているからなんだろうな。でもその根本を言えば違う話になる。
「名無しさんが好きだから」
どうやらとっくに俺の中のタガが外れているらしい。ついに頭がおかしくなった気分。
俺の返事を聞いて元から赤くなっている名無しさんの顔がますます赤くなった。意識しているって分かる。もっともっとそう思えばいい。ずっと俺はそんな状態だったんだから。
『そういう風に見たことがないって言ったのに…』
「だったらそういう風に見ればいいだろぃ」
『そういう問題じゃ…っ』
俺の言っていることは屁理屈であり、願望でもある。困らせることを分かっている。だってきっと名無しさんのことだから悩んだんだろぃ?それって俺のことを考えていたってことじゃん。
『困るの、本当に。赤也くんとも変な感じになっちゃうし…』
また赤也。この前振られた時も赤也。この場にいるのは俺だっつーの。
「そんなに赤也が大事?それとも俺のことを好きにならない言い訳?」
こう言っては何だけど、俺だってそれなりに赤也が大事だ。でも自分の気持ちの方がもっと大切。今までぞんざいに扱ってきたから、今大切にしている。
『だって赤也くんと付き合ってるから。それにブン太といると胸が苦しくなる…』
え、何それ。それってつまり…変な期待をするのは俺だけじゃないよな?そんなことを言われたら誰だって自惚れる。
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