クロスロード

□消しゴム
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ねぇ、今ブン太と何が起きた?
不意に抱き締められたから抵抗しただけなのに、うるせぇ、って言われて…。




ブン太を思いっきり突き放して、私は階段を全力で駆け下りた。涙で視界は霞んでいて転びそうになったけど、立ち止まれない。





「名無しさん先輩!」



昇降口に着いたとき、声を掛けられた。私の名前をそう呼ぶ人はほとんどいない。もちろん彼を除いて。





『あかや、くん…っ』



正直見られたくなかった。顔も髪の毛もぐちゃぐちゃ。だけど私の心の中にあるのはそれだけではない。心の大部分を占めているのが罪悪感。





「え、ちょっ、何で泣いているんすか!」



答えられなかった。責められても慰められても、どちらにせよ返ってくる言葉が怖かったから。





「名無しさん先輩?」


『ごめ…っ』



ブン太に隙を見せてごめんなさい。なにも言えなくてごめんなさい。





「落ち着いて」



ギュッと抱き締められると、年下の赤也くんがぐんと大人に感じた。そんな彼の腕の中で何も言えずにただ泣いているだけの私は子ども。





「とりあえず今日は帰りましょ」



背中を撫でられてようやく帰路に向かって歩き出す。帰り途中も赤也くんは何かを聞いてきたりしなかった。






「じゃあまた明日っす」



うん、と頷いて家の中に入った。お母さんが私を呼ぶ声が聞こえたがリビングに寄らず、自分の部屋に駆け込んだ。そしてそのままベッドへダイブ。





頭の中はぐちゃぐちゃだ。それはブン太に告白された時からずっと。元はといえば気付かなかった私が悪いんだけど。でも普通に暮らしていてこの人、私のこと好きなのかな?って思わないから仕方がない。




それにキスは赤也くんとしたことあるけど、それは嬉しくて幸せなんだなって思いに浸れた。だけどブン太とのは切なくて苦しくて震える。





『もう、分からないよ…』



私は枕に顔を埋めて目を閉じた。全部夢であってほしい、そう願いながら。








消しゴム
(全部消して)





-continue-




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