男装歌姫

□男装歌姫4
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佳「瑠亥〜…風呂空いたよ」


って納戸を覗いたが瑠亥の姿はなかった
どこにいるのだろう…
さっきここへ来る前に瑠亥の部屋を見たけどそこにもいなかった
迷子になっているのかも知れない。この無駄に広い家のどこかで…

とりあえず、思い当たるところを回ってみることにした

最初に訪れたのは健二兄の部屋
もしかしたら居場所を知っているかもしれない


佳「健二兄…いる?」


健「あ、佳主馬君。何か用?」


佳「瑠亥見なかった?」


健「瑠亥君?……見なかったけど、…」


佳「そ、ありがと…」


健「あ、待って佳主馬君!
もしかしたらまだ夏希先輩と話してるかもしれない」


佳「…………夏希姉と?」


健「うん、“やっぱり!”って呟いて瑠亥君を部屋に呼んでたけど…
まだそこにいるかも知れない」


佳「……………………」


夏希姉が?瑠亥を?
確かに瑠亥は女の子からモテるし、かっこいいと思うけど…
夏希姉には健二兄がいるよね?


佳「ありがと健二兄!」


僕は走って夏希姉の部屋へ向かった……















佳「あ、いた。瑠亥!」


ビクッと肩を震わせてこちらを見る

瑠亥は今、夏希姉の部屋をちょうど出たところだった


瑠「おぉ……佳主馬か。風呂出たんだ」


佳「何してたの?」


瑠「…………ちょっと佳主馬のこと話してただけさw」


佳「ぼ、僕のこと!?」


瑠「そだよ。…………
よっしじゃあ風呂入って来ますか!おやすみ佳主馬!!」


ヒラヒラと手を振って、まるで逃げるように風呂場に向かっていく瑠亥
それにさっきから話に間が多い

本当に、夏希姉と何を話してたんだろう……

すごく気になる。けど僕もそろそろ眠い
納戸に戻って少しOZをやってから寝よう
そう決めて、一旦瑠亥の件をおいて僕は納戸に向かった























お風呂につかってぼんやりとこないだのOZでの話を思い出す…

ーーーーーーーーーーーー


ナ『ちょっと最近いいんじゃない?ルイちゃん!』


ル『そ、そうなんですか…?』


俺と話しているのはナオという眼鏡をかけた青いおじさんのアバター
“ルイ”のディレクター…………みたいな人だ
勝手にアドバイスとかしてくる
それはそれで別に何かされるわけじゃないし構わなかった…
から俺もナオとは普通に話すようになっていた


ル『最近は………特に何もなかったですけど』


ナ『嘘つくんじゃないってぇ〜。あれだろ!?
“キングカズマ“!!アイツがたまに来るようになってからメチャクチャ良くなったよ!』


ル『………………はい?』


ナ『チクショー!!羨ましいぜ!キングカズマのやつ!』


ル『……………………………』


別にそんなこと気にしたことなかった

確かにカズマが来るようになってから声の調子も、歌詞も、
だんだん良くなったのは自分でもわかった

けど、それがカズマが来てくれたからとかは思っても見なかったこと…

そりゃ、来てくれたときは正直嬉しかったし?
真剣に聞いてくれてるから頑張ろうとも思ったし?
自分の気持ちがカズマに届くように歌詞もたくさん作ったし?
………
てか自分の気持ちってなんだよ、
これじゃあまるで俺が…


ナ『好きなんだろ?キングのことが…』


ル『バッ!!…あ、………
ち、違いますよっ!!たまたま最近調子が出てきただけですから、』


ナ『………今“バカッ!!”って言いそうになってたよね』


ル『そ……そそそんなこと言うわけないじゃないですか、……;;;;』


ナ『あれ、空耳?いやでも明らかに動揺して『空耳です』……』


“おかしいなぁ…ま、いいか”
と呟くナオに申し訳なくなる
確かに今俺は“バカッ!”っていいかけた。危ない危ない…

でも絶対にあり得ないんだ
カズマは俺の親友だし、……
俺が女だってことも、ルイだってことも………知らないんだ


ナ『次の曲はさ、“夏の恋愛”をテーマにしてみないかい?』


ル『……夏の、…恋愛?』


ナ『そーうさ!自分の届かない恋心を儚く歌うんだ
まちがいなくヒットする!うん!』


ル『届かない恋心……儚く、ですか…』


ナ『そうそう!ルイちゃんのそのままの気持ちを歌詞にすれば書けるんじゃないかな?w』


意外とナオにはそういう才能があるかもしれない
なかなかのいい案だと思った


ル『………分かりました。やってみます』


ナ『そーか!それは良かった!
じゃあ次のパフォーマンス楽しみにしてるからね〜』


ーーーーーーーーーーーー

毎日少しずつ、思いついたことを繋げて…………もうすぐで完成
だけどここじゃ下手に練習できないから本番一発でいこう

きっと大丈夫。アイツに届くように歌えばいいんだから……


瑠亥は両頬を両手でパシンッと挟んで気合いを入れると風呂から静かに上がった
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