男装歌姫

□男装歌姫11
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別のパソコンを使って僕もOZに入った
いつの間にか瑠亥も入ったらしく、白黒のマーブルウサギが僕を見つめていた

OZは心なしか、アバターの数は少なかった…


カ「自分からOZに入るなんて珍しい…」


ル「気になったからな、見に来た。……アバターの数は、少ないな」


どうやら本当にアバターは少ないようだ

ルイの後ろにはケンジ兄の黄色のリスのアバターがヒョコヒョコと動いていた
そう言えばキーワードが見つかったって言ってたっけ?


カ「…そのアバター…」


ケ「え?あぁ。今はこれが僕のアバターなんだ
前のはちょっと、使いづらくて…」


ル「ケンジ兄、できそうなの?パス解除」


ケ「多分ね。大丈夫!」


ル「なら、いいんだけど…」


カ「…?」

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怪訝そうな顔をしてパソコンに向かっている瑠亥を見た
何か申し訳なさそうな顔をしているようにも見えて……

もしかして何か知ってる…?

そんな考えが浮かんだ時、納戸の外で激しい足音が響いた
…誰かが近づいてきている

次に納戸の入り口に飛び込むように見えたのは
呼吸を乱して汗ばんでいる夏希姉だった


夏「健二君!入れた!!?」


健「まだです夏希先輩。このキーワードを見るために少し細工しないと……」


健二兄はそういってうちの電話を借り(取引先に言うみたいに)
そしてどこかに電話をかけた
多分、去年お世話になったあの人だ


健「あ!もしもし、佐久間?OZで頼みたいことがあるんだ。今大丈夫?」


佐『わかってる。お前のことだからすっかり騙されてると思ってたよ』


瑠「………………騙されてる?」


スピーカーモードにした電話を机に置き、
再び健二兄はパソコンに目を移した

そのスピーカーモードの電話から聞こえた会話に瑠亥が首をかしげる


佐『今日の朝、一斉に送信されたルイサポートからのメール…
あれは多分、歌姫の相当なファンの仕業だったとみえる』


佳「ファン?」


佐『ああ。今日の夕方六時から歌姫のパフォーマンスがあるだろ?
歌姫はサポーターやマネージャーをつけてないって聞いた
もし相当なファンだとしたら歌姫を独り占めしたいだろうな』


佳「だからOZに登録してる全員にOZに入れないように
メールを開けたら自動的にその機械からは“入れなくなる”ようなパスをかけたってこと?」


佐『さすがキング!ルイサポーターは相当歌姫に惚れてて相当OZに詳しくて
プログラムにも相当慣れてるやつってこと』


夏「でも佳主馬みたいにメールを開けない人もいるじゃない?失敗ってことでしょ?
それに、佐久間君がキーワード見れるようにしてくれたら健二君が入れるようになるし…
これじゃあ…」


瑠「……まるで意味がない、だろ
例えプログラムの技術があったってOZの管理人とか、世界中の人が動き出すのも時間の問題」


佐『とりあえずは少しでも人数を減らしたかったのかも知れないな
健二!今データ送ったからアップロードしてパスを解いちまえ』


健「ありがとう佐久間!!」


あとは健二兄がパスを解けばそれで一見落着

僕も瑠亥も安心して、ОZからログアウトしようとしたときだった

健二兄が送られてきたメールの添付データを開けてパソコンのキーをカタカタと叩いて…

止まった

パソコンの画面をじっと見つめて目を見開き、そのまま微動だにせず驚いた表情で固まったのだ


瑠「…………………………」


夏「健二くん?」


佳「……………!!………すごい細工だ
…やられたね健二兄」


そのパソコンに映っていたものは…

押して下さいと言わんとばかりの大きなスタートボタンと、

その奥に、画面の真ん中を線で区切られ、左右に並べられた真っ白いスペースだった


瑠「意味……分かんない」


健「……………数学だ………」


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