男装歌姫

□男装歌姫10
1ページ/2ページ

僕が近くへ行くと、それに一番早く気づいた瑠亥がビクリと肩を揺らした

多分、勘づいていたみたい

一方で師匠はというと……


万「お〜〜!やっと来おったか佳主馬。遅かったのぉ」


佳「師匠……、おはよう…」


瑠「…………ははっ!、佳主馬…
…酷いなぁ…w」


佳「え?…………あぁ、
瑠亥もでしょ。師匠に言わなくてもいいじゃん」


瑠「はぁ………やっぱり、か」


佳「……………………」


万「ん?なんじゃなんじゃ?」


師匠には僕たちの会話が分からなかったらしい…
僕がさっきの話を聞いていたこと、瑠亥は気づいていた
いや気づいていたんじゃなくて……
てか僕、かまかけられた


佳「………瑠亥」


瑠「ま、……そういうことだから
さぁ、佳主馬も来たことだし、万助さん始めましょうか……少林寺」


万「お〜!そうじゃったな!佳主馬!!手加減せいで行け!
瑠亥は女だがなかなか手強いぞ」


佳「げ…………マジで?」


瑠「…じゃあ今度は俺から」


佳「!!!!!」


そう言って瑠亥はいきなり不意打ちで回し蹴りを出してきた
とっさに構えて腕でそれを止めると弾き返す

ニヤリと瑠亥は笑った


瑠「……OZの仕返し、」


ボソッと呟いた言葉に火がついた僕は瑠亥に向かって
手加減なしの勝負を始めた

上等じゃん。OZでも少林寺でも
瑠亥には絶対に負けないから……

























いつの間にか観戦者が増えていて、
夏希姉と健二兄が縁に座って面白そうにこちらを見ていた

それに気づいたのは僕が地面に仰向けに倒れている瑠亥に馬乗りになって
顔の寸前で拳を止めた体勢になっている時だった

つまり、勝負がついた時だった

二人とも汗だくで荒く呼吸を繰り返していてしばらく動けなかった

僕は拳を下ろしてゆっくり立ち上がった
瑠亥を見下ろすと、瑠亥は声をあげて笑い始めていた


瑠「あ、ははははっ!!…はぁ〜
やっぱ負けた!強くなったなぁ佳主馬!」


佳「ハァ、……当たり前。ちゃんと特訓してるから」


瑠「んー…ま、そうか…」


夏「二人ともすごーいっ!!強いね!」


健「やっぱり佳主馬君、キングカズマだ…!!」


瑠「…………あれ?万助さんは…」


夏「万助おじいちゃんならさっき昼ご飯のイカの調理に行っちゃった」


佳「そうなんだ…(やらせておいて;;;)」


瑠亥は体を起こして立ち上がると、夏希姉が渡してくれたタオルで顔を拭いた
僕もタオルをもらって首筋の汗をふく


瑠「ありがとう佳主馬。本気で付き合ってくれて。楽しかった」


佳「僕も。……楽しかったよ」


夏「いい勝負だったね健二君。途中からしかみてないけど…w」


健「そ、そうですね……;;」


瑠「ふぅ〜!一汗かいたことだし、一旦部屋に戻ろうかな……
佳主馬はどうする?」


佳「今何時?」


健「えっと…ちょうど9時だよ」


ポケットから携帯を取り出して健二兄が時間を知らせてくれた

9時か……
パフォーマンスまであと9時間だな
とりあえず、お昼まで何して時間を潰そう……


健「あれ、メールだ」


携帯を開いていた健二兄が
メールが届いていたことに気がついて小さく呟いた


夏「あ、そういえば私にもメール来てたっけ?
二人の少林寺に集中してたから忘れちゃってた…」


そういって夏希姉も携帯を開く

僕と瑠亥は携帯をいじっている健二兄と夏希姉を見て顔を合わせた
“で、どうするの?”再び訊かれる


佳「僕は……、納戸でOZやってるよ。他にやることないし」


瑠「わかった。じゃあ俺もあとから行くよ
……………行くか」


佳「うん」


二人を置いて僕たちは歩き始めた
廊下をまっすぐ歩いてもうすぐ突き当たり…

そうして夏希姉と健二兄が見えなくなる直前
気になるような会話が微かに聞こえた


健「あれ!?……OZに入れない…?」


夏「あ、……ほんとだ。私のも……」


佳「……………………」


瑠「……何かあったのかな?」


瑠亥にも聞こえていた微かな会話に、少し心配はするものの
僕たちはその時はまだ、これから始まる第二の戦争の幕開けだとは知らなかった……


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ