蒼焔群情-soul's crossing-〔本編〕

□Joker 【後編】
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「昨日、仰いましたよね。"何故私に付き纏うのか"と。私も、他の文官の方々とは違う司馬懿様に、興味が湧いたのです」

 黙って聞いていた司馬懿は、くくと喉の奥で笑った。

「ふ……ふははははは!その気骨…心眼、育て甲斐があるというものよ…!先に言っておくが、仮に私に野望があったとしても、それを教えるつもりは無いぞ」

「分かっています。今後は司馬懿様のもとで学びつつ、私自信の手で暴こうと思います」

 わざとらしい程に明るい笑みを浮かべて見せると、司馬懿はニヤリと不敵な笑みで答えた。 結局、司馬懿は野望を抱いているかどうかに関しても、晟瑶を利用する事に関しても、否定はしなかった。
 それが良い事へ繋がるか悪い事へ繋がるかは分からないが、今はこの人のもとで学べる事全てを身に付けようと思うのだ。そして、いつか楊恪のいた智の高みへ昇れたらいい。
 ふと、司馬懿が頭を抱えた。

「…いかん、急に目眩が…」

 晟瑶は、その顔色に驚いた。

「し、司馬懿様、熱があるのではありませんかっ?顔が赤いです!」

 元々肌が白いせいか、火照りの色も顕著に表れる。

「熱…?」
 晟瑶を見上げたその瞳は、明らかに発熱に浮かされている。
 司馬懿は、ゆらりと立ち上がった。

「…そうだ、私は風邪を引いていたのだったな。悪いが…少し休ませて貰うぞ…」

「はい、その方が…」

 ふらふらと奥の間へ向かう司馬懿を見守っていると、突然その痩身がバタリと倒れた。

「わぁぁっ!しっ、司馬懿様、しっかりなさって下さい!だっ…誰かー!!」

 低く唸りつつピクリとも動かない司馬懿を揺さぶりながら、外にいるであろう下級文官を呼ぶ。
 師事するとは言っても、正式にそうなるのはまだ先になりそうだった。今年の風邪は症状が長引くため気を付けるようにと、昨日医師に注意をされたばかりだったのだ。

「お大事に…」

 奥の間へ運ばれる司馬懿を、晟瑶は苦笑に近い笑みを浮かべて見送った。





司馬懿編・完


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編集後記

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