蒼焔群情-soul's crossing-〔本編〕
□Joker 【後編】
2ページ/3ページ
「昨日、仰いましたよね。"何故私に付き纏うのか"と。私も、他の文官の方々とは違う司馬懿様に、興味が湧いたのです」
黙って聞いていた司馬懿は、くくと喉の奥で笑った。
「ふ……ふははははは!その気骨…心眼、育て甲斐があるというものよ…!先に言っておくが、仮に私に野望があったとしても、それを教えるつもりは無いぞ」
「分かっています。今後は司馬懿様のもとで学びつつ、私自信の手で暴こうと思います」
わざとらしい程に明るい笑みを浮かべて見せると、司馬懿はニヤリと不敵な笑みで答えた。 結局、司馬懿は野望を抱いているかどうかに関しても、晟瑶を利用する事に関しても、否定はしなかった。
それが良い事へ繋がるか悪い事へ繋がるかは分からないが、今はこの人のもとで学べる事全てを身に付けようと思うのだ。そして、いつか楊恪のいた智の高みへ昇れたらいい。
ふと、司馬懿が頭を抱えた。
「…いかん、急に目眩が…」
晟瑶は、その顔色に驚いた。
「し、司馬懿様、熱があるのではありませんかっ?顔が赤いです!」
元々肌が白いせいか、火照りの色も顕著に表れる。
「熱…?」
晟瑶を見上げたその瞳は、明らかに発熱に浮かされている。
司馬懿は、ゆらりと立ち上がった。
「…そうだ、私は風邪を引いていたのだったな。悪いが…少し休ませて貰うぞ…」
「はい、その方が…」
ふらふらと奥の間へ向かう司馬懿を見守っていると、突然その痩身がバタリと倒れた。
「わぁぁっ!しっ、司馬懿様、しっかりなさって下さい!だっ…誰かー!!」
低く唸りつつピクリとも動かない司馬懿を揺さぶりながら、外にいるであろう下級文官を呼ぶ。
師事するとは言っても、正式にそうなるのはまだ先になりそうだった。今年の風邪は症状が長引くため気を付けるようにと、昨日医師に注意をされたばかりだったのだ。
「お大事に…」
奥の間へ運ばれる司馬懿を、晟瑶は苦笑に近い笑みを浮かべて見送った。
司馬懿編・完
次ページ
編集後記
⇒⇒⇒⇒
→
次へ
←
前へ
[
戻る
]
[
TOPへ
]
[
しおり
]
カスタマイズ
©フォレストページ