。゚*.☆宝石小箱☆.*゚。

□ミスター・ローレンツは愛されたかった
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白夜がそう言えば、虎徹は少しだけ驚いたように目を丸くしてそして笑った。

「――サンキュ。」

それ以上は何も言わず、白夜はバーナビーのマンションへと家路を急いだ。



ミスター・ローレンツは愛されたかった



「――そうだよね。皆、言わないだけで何かを抱えて生きてるんだもの。」

相変わらず殺風景なバーナビーの部屋には不釣合いなカラフルなお皿を用意して。
白夜は色とりどりの野菜を煮込んでポトフを作る。
付き合ってからバーナビーが美味しいと褒めてくれたものだ。

「――ただいま。白夜?来てるんですか?」

しばらくして玄関で音がしたと思ったら、少し疲れた様子のバーナビーの声が聞こえて来た。

「お帰り。もうすぐ御飯出来るけど、先にお風呂入っても良いよ。沸いてるから!」

キッチンから声を掛ければ、返事は無く白夜はそのままバスルームに向かったのだと思った。

「よし。こんなもんかな?」

味付けを確認してコンロの火を消そうとした瞬間、スイッチに掛けた手にバーナビーの大きな手がかかる。

「――きゃ?!ビックリした!驚かさないで――。」
 
後ろから気配を消して抱き締めてきたバーナビーに、白夜は少しだけ不服そうに言うが肝心のバーナビーは楽しそうだ。

「だって玄関まで迎えに来てくれないから。ちょっとしたお返しです。」
「――仕方ないじゃない。煮込んでたんだもの。」
「止めて来てくれたら良かったじゃないですか。」

今日の彼はどうしてか我儘だ。
バーナビーがこうなる時は、ヒーロー関係で何かあった時だと白夜は知っている。

「――お疲れ様。」

後ろを向いてバーナビーに言えば、彼は白夜を抱きしめたまま耳元に顔を伏せる。
まるで顔を見られるのを拒否した駄々っ子のように見えて、白夜は苦笑しながら頭をゆっくり撫でてやる。

「――なんで何も聞かないんですか?」
「聞いて欲しいの?」
「――言いたくありません。」
「うん。知ってる。」
「――なんで怒らないんですか?」
「こんなことで怒ってたらバーナビーの彼女はやってられないなぁ。」

時々彼はこうやってわざと自分を悪者にして、距離を取ろうとする事がある。
それはきっと近付きすぎるのを無自覚に防衛しているのだろうけれど、白夜は離れてやるものかと思った。

「――はぁ。白夜には勝てないですね、僕の負けです。」
「――て言うか、虎徹さんと喧嘩したんでしょ?」
「?!」

言い当てられた事に言葉を失ったままのバーナビーに白夜は尚も言葉を続ける。

「バーナビーお給料が良いから1部に行きたいって言ったんだって?虎徹さん、私を養う為だって勘違いしてたよ?ちゃんと言えば良かったのに。孤児院に寄付するためだってさ。なんでそこ格好付けちゃうの?」
「ちょ、ちょっと待ってください。白夜?なんでそんなに詳しいんです?」
「あと、あのゴールデンライアンって誰?私、1部に戻るとは聞いたけど相手が虎徹さんじゃないって聞いてない。」
「それは僕も今日初めて知って――、って!白夜!」

珍しく声を荒げたバーナビーに、白夜は悪戯気味に舌を出す。

「な〜んてね。今日虎徹さんに偶然会ったんだよ。今日のHERO TVが始まったのもたまたまスクリーンで見たの。」
「スクリーン?なんでその時間までまだ街にいたんです?」
「え?――ちょっとね。残業になっちゃったの。」

妙に鋭いところに気付いたバーナビーに白夜は少しだけ動揺するが、出来るだけそれを出さないように答えた。
けれどもそれを許すバーナビーではない。

「残業?なんで?今日は定時で帰れる日ですよね?」
「――ジャスティスデーが近いから忙しいのよ。」
「じゃあなんで泣く必要があるんです?」
「――え?!」

予想しなかったバーナビーの言葉に、白夜は思わず声を上げる。
身長の高いバーナビーを見上げれば、そこには少しだけ眉根をつり上げたバーナビーがいた。

「――虎徹さんからさっき連絡が来たんですよ。どっかの誰かさんが余計な事を言ってくれたせいで。」
「余計って――、ごめんなさい。バーナビーは虎徹さんと一緒が良いのかと思って…。お節介だった、よね?」

段々と良かれと思ってした事がお節介だったのではと自己嫌悪になって行く。
ついに言葉を止めてしまった白夜をバーナビーは優しく抱き締める。

「――意地悪が過ぎましたね、すみません。白夜のお陰で虎徹さんとは仲直り出来ました。有難うございます。」
「え?」

先程とは打って変わって優しい声音のバーナビーに、白夜は戸惑いを隠せない。
 
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