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□be too late.
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脳裏に浮かぶのは、あの紫がかった銀色。
冷たい体温故に、あの手が触れてくるとヒヤリとした感覚が体に走る。
触れ合う唇はまるで冷ややかな月と暖かい太陽が交差する時のように、その温度差を感じた。
「…ん、ちゅ…っ、ん…」
「ん、…アルヴィス君?」
互いが少しの呼吸を欲して唇を離した。
ベッドに深く沈みこみ、目の前からは冷たい、それでいて満たされるようなファントムからの口づけが降りてくる。
まだ足りない、と瞳を甘く薄めそのことを伝える。
そしてまたファントムは俺の口元に顔を近づけるんだ。
一言、余計な事を口にして。
「…ふふ、意外と欲張りなんだね……、…ん」
確かにそうなのかもしれない。
いや、昔はそうでもなかった。
欲しいものがあっても必ず我慢出来た。
自分はそんなに物欲しい子供なんかじゃない、今思えば自らをそう言い聞かせたかったのかもしれない。
それがあだとなったのか、あれから6年。
この目の前の男に出会い、今まで我慢していた『欲しい』という欲求が現れだしたのかもしれない。
それでは子供と一緒だな、と今更になって気付いたって手遅れなのだが。