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□君と日の出を拝みたい
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今、俺の隣には、こたつに下半身を突っ込み、両手でみかんの皮を剥きながらテレビにかじりついている男がいる。
深読みは、しないでほしい。
今日は世に言う年の変わり目の日。
メルヘヴン中今日はいつもとは一味違う賑わいを見せている。
アルヴィスはレスターヴァ城内のファントムの部屋にいた。
それは数時間前、アルヴィスはメルの一行と共にレギンレイヴ城で新年を迎える為の準備をしていた。
ギンタとスノウ、お共のエドは必要な物の買い出しに行き、ドロシーはベルと年越しの料理作り、ナナシやアルヴィス達は大掃除とこきを使われていた。
アルヴィスは高くそびえ建つ城の窓拭きをしていた。
その時だった。窓の淵にかけていた足を踏み外し、地上に落ちてしまえば、まずただでは済まないであろう高さからアルヴィスは落下してしまったのだ。
『落ちるッ…!』
と思った矢先、アルヴィスは落下どころか、急に体が軽くなり、ぎゅっと瞑っていた目を開いた。
「こんにちは、アルヴィス君」
あろう事か、そこにはあのファントムがアルヴィスを抱き支えていた。
アルヴィスの落下のタイミングと、ファントムの気まぐれのタイミングがぴったりはまり、アルヴィスは一命を取りとめた。
「…ふぁ…、ファントム…」
「ふふ、僕のお陰で助かったね、アルヴィス君。」
アルヴィスをお姫様だっこ状態で受け止めたファントムは、名残惜しそうにアルヴィスが落ちたであろう窓を抜けて城内に下ろしてやる。
「これで仮が一つだね。」
嬉しそうにそう告げると共に、新年間近に死んじゃうなんてマヌケがする事だよ、と付け加えた。
アルヴィスは、それに少し悔くなり、礼を言う事も忘れて投げ返した。
「なッ何が目的だ…?!」
予想でもしていたのか、ファントムはニヤリと口をつり上げ、
「よくわかったね」
と答えた。