雪が降ったらね、ホワイト・クリスマスって言うんだよ。 そんなことをシオに言ったのは、絵本か何かを見てクリスマスに興味を示したアラガミの少女に、クリスマスについて知っている限りのことを教えた、話の流れでのことだった。 クリスマスが「神の子」と呼ばれた人の誕生日であること。綺麗に飾ったクリスマス・ツリーのこと。パーティーやケーキの話に、プレゼントを貰うと嬉しいことなど。 宗教的な厳密な説明ではなく、極東的なクリスマスの説明をしてあげたその流れで、雪が降るとね……と、そんな話もしたのである。 「ゆき」ってなんだ? と何事にも興味津々で、知識を貪欲な程に欲する少女が重ねて聞くので、あなたが前にいたところにたくさんあった白いものだよと答えたら、あれかー、と少女はすぐに納得した様子を見せたのだが。 その直後には眉をしかめて、あのつめたいのはおいしくないんだ、と言ったのだ。 何でも「食べること」が基準らしい彼女に、やっぱりアラガミなんだなと改めて実感し、それでもそんな彼女を可愛いと思ったものだ。 ――彼女はもう、この地上のどこにもいない。 遠い遠い昔に作られたおとぎ話のお姫様のように、ある日月へと昇って行ってしまった。 今でも折に触れ、彼女を思い出す。 歌声。無邪気な笑顔。幼い仕草に、たくさんの質問。 ――くりすますは、いいことか?―― ゆきはうまくない、と顰め面した彼女が、またすぐに興味を戻して首を傾げたその時、確かこう答えたのだったか。 『家族や大切な人と一緒にいられたら、嬉しいしいいことだよ』――と。
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