あまつそらなる

□終章
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【再会】


 正体不明のアラガミによってアナグラが襲撃された日から、今日で四日が過ぎた。
 その夜の内にエイジスに乗り込んだ第一部隊は、翌日の未明に無事にアナグラに帰投し――そして、ノヴァによる終末捕喰の危機は回避された。
 しかし、その事実を知るのはアーク計画に関係した者に限られており、この世界に暮らすその他大多数の人間は、自分達がそんな危機に晒されていたことなど未だ知らぬままだ。
 全てを隠蔽する――ツバキから一連の報告を受けたフェンリル本部の、それが最終判断だった。
 ノヴァによる終末捕喰が始まる寸前であったことも、フェンリル極東支部討伐班第一部隊――たった五人の部隊によって、この世界に降りかかりかけた災いが取り除かれたことも。
 アーク計画に関しての記録は一つ残らず極秘事項フォルダに放り込まれ、計画を知る者には、それ以外の者に話すことならずとの箝口令が敷かれた。
 つまりは、対外的には一切がなかったこととされたのである。
 とはいえ、人の口に戸は立てられないというのが、古今東西に関わりなく存在する決まり事であろう。
 外部に対しての箝口令には従っても、フェンリル各支部に存在する関係者の間では、長いことアーク計画やノヴァについての話題が口の端に上っていた。
 そんな中で、第一部隊と、彼等を率いる年若き隊長の英雄譚も、「噂」として密やかに世界中に広まっていくこととなる。
 だが現在も――そしてまた未来に於いても――噂に関しては当の第一部隊の預かり知らぬことだし、仮に噂が耳に入ったとしても、彼等はそれを真っ向から否定するであろう。
 何故なら。
 そう……何故ならば、彼等は知っているからだ。
 ノヴァの終末捕喰から地球を救ったのは、自分達ではないという事実を。





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