No.6
□スロー・サマー
1ページ/1ページ
【スロー・サマー】
「ネズミ、もうすぐ夏休みだね」
「そうだな」
「休みに入ったら、いろんなことしたいね。まずはさ、プール行こうよ」
「そうだな」
「それからその後は……ああ、お祭りも行きたいな。君の浴衣姿見てみたいし」
「そうだな」
「……ねえ、ネズミ聞いてる?」
「そうだな…って、え?何だ?」
手元の本から顔を上げて紫苑を見る。昼休みの教室は何かと騒がしい。
目の前には椅子に座った紫苑がこちらを見ていた。目が合うと、紫苑はぶすっとした顔で言ってきた。
「……やっぱり、聞いてないんじゃないか」
「ごめんごめん。で、何だっけ?」
「夏休み、一緒に出掛けようって話だよ。プールとかお祭りとか」
「ああ。でもあんたとプールねえ…紫苑ってさ、まず泳げるの?」
俺の問いに、紫苑は抗議の声を上げる。
「なっ…僕だって人並み程度には泳げるよ!!君だって知ってるだろ!?」
ほら学校の水泳の授業で!!と、紫苑が言った。
ああそういえば、この学校は水泳の授業があるんだった。その時初めて紫苑が泳ぐのを見たんだっけ。
そう考えつつ、俺は曖昧に返事を返した。
「……まあ、出掛けるくらいは付き合ってやってもいい」
「本当!?じゃあ日程決めなきゃね!」
「あんた一人で行かせたら迷子になるのがオチだからな」
そういってやれば、案の定紫苑はネズミ!、と声を上げた。
まだなにか言ってたけど、それを無視して本に目を戻す。そしてふと思ったんだ。
たまには、二人でのんびりな夏休みもいいかな、なんて。
(きっと現実は、)
(あんたに振り回されるだろうけど)
*****
いやー久しぶりの紫ネズ!!
まだ梅雨ですが、夏物です。
紫苑とネズミは高校2年生で、去年もクラスが一緒だった設定。違うクラスには沙布とイヌカシもいます。で、飲んだくれ教師で有名な力河。
ああーなんだかパラレルもの書きたくなってきた…。
もしかしたら、続くかもしれませんわかりません。