No.6

□スロー・サマー
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【スロー・サマー】



「ネズミ、もうすぐ夏休みだね」

「そうだな」

「休みに入ったら、いろんなことしたいね。まずはさ、プール行こうよ」

「そうだな」

「それからその後は……ああ、お祭りも行きたいな。君の浴衣姿見てみたいし」

「そうだな」

「……ねえ、ネズミ聞いてる?」

「そうだな…って、え?何だ?」



手元の本から顔を上げて紫苑を見る。昼休みの教室は何かと騒がしい。
目の前には椅子に座った紫苑がこちらを見ていた。目が合うと、紫苑はぶすっとした顔で言ってきた。


「……やっぱり、聞いてないんじゃないか」

「ごめんごめん。で、何だっけ?」

「夏休み、一緒に出掛けようって話だよ。プールとかお祭りとか」

「ああ。でもあんたとプールねえ…紫苑ってさ、まず泳げるの?」


俺の問いに、紫苑は抗議の声を上げる。


「なっ…僕だって人並み程度には泳げるよ!!君だって知ってるだろ!?」


ほら学校の水泳の授業で!!と、紫苑が言った。
ああそういえば、この学校は水泳の授業があるんだった。その時初めて紫苑が泳ぐのを見たんだっけ。

そう考えつつ、俺は曖昧に返事を返した。


「……まあ、出掛けるくらいは付き合ってやってもいい」

「本当!?じゃあ日程決めなきゃね!」

「あんた一人で行かせたら迷子になるのがオチだからな」


そういってやれば、案の定紫苑はネズミ!、と声を上げた。
まだなにか言ってたけど、それを無視して本に目を戻す。そしてふと思ったんだ。





たまには、二人でのんびりな夏休みもいいかな、なんて。







(きっと現実は、)
(あんたに振り回されるだろうけど)







*****
いやー久しぶりの紫ネズ!!
まだ梅雨ですが、夏物です。

紫苑とネズミは高校2年生で、去年もクラスが一緒だった設定。違うクラスには沙布とイヌカシもいます。で、飲んだくれ教師で有名な力河。

ああーなんだかパラレルもの書きたくなってきた…。
もしかしたら、続くかもしれませんわかりません。


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