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□92どうやらこれは俺だけの特権らしい
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「いつも、ご苦労さん。」
わしゃわしゃと目の前の女の子、っというと彼女には申し訳ないが…
それでも、俺よりもずいぶんと若い彼女の髪を撫でる。
「も、もう。緑川さん…髪がぐしゃぐしゃですよぉ〜」
赤く色付いた頬をぷくっと膨らましながら、俺に抗議するその顔が俺はたまらなく好きで―。
年甲斐もなくっと自覚はしているが、どうしても構いたくてしょうがなくなる。
「ハハッ…スマン、スマン」
「い、いえっ。」
くしゃくしゃになった髪を直しながら、彼女は俺に笑顔を向けてくれる。
その笑顔を見ると、嫌われてはいないんだなと、ホッとしている自分がいる。
幾分歳が離れているせいか彼女の事は可愛くて、妹のようなそんな風に感じて接していたように思う。
だが、接していく内に、可愛いだけじゃなく気になって、何か困っていたら助けてやりたくて。いつのまにか目が離せなくなっていた。
今では1人の女性として、彼女の特別になりたいと思うようになった。
ただなぁ〜…
如何せん独身生活が長すぎて、最近は恋愛からも遠ざかっているのが裏目に出ていると思う。
「緑川さん?」
「…ん?なんだ?」
俺がボーッとしていたからか、彼女が心配そうな顔をして俺を見上げていた。
「…えっと…どうかしましたか?何か心配事でも…」
ジーッと見つめられれば、俺の心臓が落ち着きがなくなるほどドクドクと響いていて、彼女に聞こえるのではないかと少し焦る。
「いっ、いやっ!なんでもないぞっ。うん、大丈夫だ。」
「ホントですか?私でお役に立てる事があるなら、言って下さいね。」
真剣な顔で俺を見つめる彼女の頭に、ポンッと手を置いて柔らかい髪を撫でれば少し俯きがちな彼女の表情は伺う事は叶わないが、隙間から覗く耳が赤くなっているのが見えて嬉しくなった。
ここまでが、今の俺の精一杯の勇気なんだと思うと情けないのだが…
「ありがとなっ。お前は優しいな。」
「…緑川さん…だからですよ。心配するのも、こうして頭を撫でてくれるのを嬉しいと思うのも…」
「…えっ…」
固まった俺に、真っ赤になった彼女が失礼します、と言いながら走っていってしまった。
《どうやらこれは俺だけの特権らしい》
(やられた…なっ。)
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企画「ちょっと、珈琲でも」参加、提出させて頂きました。
ドリさんが年甲斐もなく(笑)片想いしてる話しが書きたくなるんです。両想いで甘いのもウハウハしますがね(笑)
とにかく、ドリさんに頭ナデナデされたいです。
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