短編
□つまりはキミがスキ
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好き、すき、スキ!!
キミが好きで仕方ない。
「レンくん!!今日、ひま?」
眩しいくらいの笑顔をまっすぐ俺に向ける彼女の急なお誘いに驚いた。
近頃、ミクさんと一緒にどこかに出かけたりすることが少なくなっていた。……というより、出かけれなかった。
理由は簡単、いたってシンプル。仕事の多さだ。
(珍しく)マスターがやる気を出して歌の仕事がかなり増えた。なんの嫌がらせなのか、俺とミクさんのスケジュールが見事なまでに被って全然会えなかった。
おかげで妄想という名の思考が俺を日々浸食して現実と見分けができなくなってきた。
全く笑える話じゃないけどな。
今、目の前で笑うミクさんまでもを“実はこのミクさんも俺の妄想なんじゃないのか”と思ってしまう。
いや、現実なんだけど。
「レンくん、レンくん。」
「ぁ、ごめん。」
「で、おひま?」
「うん。特に用事はないよ?」
「やったぁ。」
えへへ、と言いながら俺の腕に抱きついてくる。
あぁ、もう、何でこんなにかわいいんだよ!?抱きしめたいぃ!!
「レンくん、」
「はいはい?」
「大好きだよ」
……あぁ、いつでも死ねる。
まだ、死にたくはないけどさ。それくらいミクさんはかわいい。いっそ仕事全部をボイコットしてしまおうか。
ここまでくれば、どこまでミクさんにおかしいぐらいに酔っているのがわかる。
リンがクオにべた惚れだったのをばかにしてたけど俺は絶対的にリンを超えている。ていうか重傷。
「どうしたの?」
不安そうにミクさんが俺を見つめる。
その仕草がかわいくて、いつまでもミクさんを見ていたい。
「ミクさんが好きで好きでしかたないなぁっておもってて。」
はわぁ、と謎の悲鳴を上げて赤く染まった頬を両手で包む。そして俺を見て嬉しそうににこにこと笑う。
ほんとにミクさんは俺を萌え殺す気なのだろうか。
「じゃぁ、レンくん、ぎゅっとしちゃってくださいな。」
ふにゃりと笑いながら、さらっとすさまじい破壊力を持ったことを言ってくれる。
もちろんこんな素敵なお誘いをこの俺が断るわけがない。
間髪入れず、ミクさんに思いっきり抱きつく。ぎゅうぎゅうと力を込めると、このままミクさんを独占してたいと欲が出てしまう。
そこは許してほしい。
人を好きになるのは誰だって自分が抑えられなくなってしまうものなんだから。
人じゃないんだけどね、俺たち。
「えへへ、嬉しいなぁ。」
「うん。離したくない。」
「離さないで。」
ぎゅっとミクさんも抱きしめ返してくれた。純粋にそれが嬉しくてもっと、もっと、と欲張ってしまう。
「今日は一日中レンくんは私のものだからね。」
冗談交じりに言うミクさんがかわいくて、でも少しいじわるしたい気持ちに駆られる。
「それはどうかな?」
なんて言えば、驚いた顔をして少しムスッとしてしまった。
どんな顔してもかわいいなぁ、ほんと。
俺から離れてそっぽを向いてあまり時間がかからないうちにまた俺の方に向き直った。
「そんないじわる言わないで。」
今にも泣きそうな勢いで俺に抱きつく。
かわいい、ほんとにかわいい。かわいすぎる。
「ねぇ、レンくんは私が好き?」
「すっげぇかわいい。」
「それ、答えになってないよ。」
ぷくっと頬を膨らませて俺を見るミクさんに笑ってみると少し不安な顔になっていった。
「ミクさんがかわいくて、かわいくて、仕方ないんだよ。」
「えぇ……。」
「つまりはね、
キミがスキ」