短編

□病気
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おかしい。

おかしすぎる。

絶対におかしい。

なんでこんなにも“おかしい”を連発して言っているのか。

それは…



「ミク姉、キスして」

「さっきもしたよね、キス。もう今日一日で17回したんだけど」

「なんか、わかんないけどキスしたいんだよ」

「じゃあ他の人にして」

「や、やだ!!ミク姉じゃなきゃ、やだ!!!!」



そう言って後ろから強引に唇を奪われる。

あ〜ぁ、18回目も奪われちゃった。

一日でこんなにキスしてたらギネス記録に載っちゃうんじゃないの。

いや、まぁ昨日の方が凄かったけど。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



昨日、疲れて寝てた。

夜中だったから当たり前だけどね。

そりゃもう“寝る子は育つ”ってな感じでぐっすりと。

けど急になんか私の上に重みが乗っかってくるわけ。

“まさか金縛り!?”とか思っちゃったの。

いや、まずボーカロイドに金縛りないんじゃないとか言われたら縦に首を振るしかないんだけど。

そもそも、じゃあなんで寝ること出来んのとか言われても困るんだけど、まぁそれは置いといて。

びっくりしたよ。

上に乗っかってたのレンくんだから。

いや、確かにね一緒に住んでると言っても彼氏なんですよ、この人。

しかもカギ掛けて寝てたのになんなの、みたいな。

一応、てか彼女だから女として見られてるのは確実なんだけど、普通夜中に忍び込んでレディの部屋に入って来る!?



しかも何、乗っかっちゃってんの。

え、自分の部屋と間違えたのかな。

とか呑気にかまえてたら、




フニって柔らかいのを唇に押し付けられたの。

んで、キスされたのかって思ったの。

ぶっちゃけ、世の中で言うバカップルだったから“おやすみのちゅー”とか“おはようのちゅー”とか普通にしてたからなんとも思ってなかったの。

けどなんかわかんないけど“あれ?”って思ったわけよ。

だってなんか辛そうだし、やけに息づかいとか甘ったるかったから。

そしたらそこからキスの嵐で思わず暴れちゃったの。

ほら身の危険を感じるとかそんなの。

防衛本能ってやつ?

まぁ、そしたら羽交い締めにされてまたキス続行。

軽いのならまだマシなんだけど、後半の方になると濃厚な方のばっかで酸欠状態になっちゃたりなんかして大変だった。

で朝起きたら



『ミク姉、ごめん。なんか俺、おかしくて…急にキスしたくなって……。嫌いにならないで』



なんて言われてみてよ。

半泣きで思わずかまってあげたくなる顔で言われてみてよ!?

許しちゃったのよ。

彼氏バカだから。

そんで、またしちゃったのよ、キス。

悪循環だよね、まさに。





そして現在に至る、みたいな。





「ミク姉、キスしたい」

「また?」

「ごめん、ホントに俺、おかしい。でも、しなくちゃ切なくて」



“辛い”って口元が動く。

あぁ、このままじゃあ本当にギネス記録載せれちゃうんじゃない?

結局、許しちゃう。

いいよって言うと嬉しそうにキスをしてくる。

そのまま抱き締められる。



「ミク姉、好き」

「ハイハイ」



レンくんの頭を撫でるともっと幸せそうに笑う。

でも……ヤバいよねぇ、さすがにこの回数のキスは。

うん、マスターに相談しようかな。

そう思ったとたんにマスターの叫び声が家中に響く。



「今すぐレンを確保っ!!!!」



レンくんと見つめ合って、首を傾げる。



「レンくん、何やらかしたの?」

「何もしてないよ」

「そっか」



バタバタとマスターが縄を持って走ってくると、あっという間にレンくんを畳んで持って行った。

ほんの数秒であんなの出来るとか凄くない?

普段からあんなテキパキしてくれたらなぁ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「で、だ」



マスターが神妙そうな顔をして私を見る。



「ミク、お前レンに何回キスされた?」

「かなり」

「やっぱりか〜」



うー、とか言いながら頭を抱え込んだ。

いや、話見えないんだけど。



「落ち着いて聞いてくれ」

「何ですか!?」

「レンは………………恐らく、キス魔病だ」



何それ。

そのまんまじゃない。





「またウィルスですよ」

「ウィルスバスターはどうしたんですか?」

「昨日、し忘れてました」



なんだとこのバカマスター。

笑ってんじゃないわよ。



「でも、キスだけなら大丈夫なんじゃないんですか?」

「常に欲情してる状態なんだぜ?大丈夫なわけあるか。ま、お前がレンとそういう関係になりたいなら話しは別だけど?」



大丈夫じゃないですね。

なりたくないですよ、はい。



「まぁ1週間ぐらい隔離しとけば、ウィルスは大丈夫になるけどさ」

「そうですか」

「ミク姉っ!!!!」



遠くの方からレンくんの声が聞こえてきた。



「今は無視しなよな」

「う、はい」

「会わせろっ!!ミク姉〜、会いたいっ!!!!」



それから1週間、毎日レンくんの叫び声が絶えなかった。

会ったときは泣きながら私に抱きついてキスをしてきた。



『あれ?ウィルス消えてない?』

『ぎゃあっ!!離せっ!!もう大丈夫だからっ!!ミク姉以外しねぇし』

『あぁ、こりゃ病気だね。ミク好きスキ病』


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