短編
□ケンカするほど
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ドキドキとうるさいくらい、心臓が鳴っている。
ミク姉の方を見ると黙ったまま俯いてる。
言うんだ、俺っ!!!!
好きって、伝えるんだっ!!!!
……まず、落ち着け。
深呼吸、3回。
よしっ
「「あのっ」」
見事にハモった。
すげぇ、タイミングのよさ。
「「いや、そっちからどうぞっ」」
はい、2回目。
この調子だと日が暮れるんじゃないか?
「じ、じゃあ、私から…」
小さくミク姉が右手を挙げておずおずと俺を見た。
「え、えーと、ね……さ、さっきの聞いてるかぎりだと、レ、レンくんは、わ、わわ、私のこと、す、す、すすすす、好…き、なんだよね?」
あぁ(やっぱり)聞かれてたんだ。
穴があったら入りたい。
恥ずかしくて、ミク姉から顔を背けつつ、正直に頷いた。
「ほ、本当に嫌いじゃない?」
「嫌いだったら、あんなこと言わない」
…しまった!!
変に素っ気なく言ってしまった!!
恐る恐る、ミク姉を見ると…
「……ひっく……ぅ…」
「っ!!??」
何故かしゃくりあげて泣いていた。
え、何!?
あまりにも、俺が嫌いで泣いちゃったとかか!?
もしも、そうなら、俺が泣きそう。
ヤバい、視界がボヤけてきた。
ちくしょ…。
「よ、良かった……うぅ…」
「え……??」
「だ、だって、いつもいつもケンカして、意地はって、レンくん、に…ひど、ひどいことばっか、言って、傷つけて……。き、嫌われてると思ってて、でも、嫌われたく、な、くて…大好きで、一緒に、いた…くて、ごめんなさい」
そう言うと今度は、わぁわぁと子どものように泣き出してしまった。
何だよ。
なんか、これじゃ、俺ばっかもらってんじゃん。
こんなにミク姉が泣いたトコみたこと、ない。
こんなに素直に気持ちを伝えてくれたこと、ない。
こんなに好きって言ってもらえたこと一度も、ない。
だから、俺だって…
「レ、レンくん…?」
もっと素直にならなきゃ、だよね。
泣いているミク姉をそっと抱き寄せて
「 」
小さくだけど、俺の気持ちを囁いた。
すると、その大きな瞳からポロポロと流れていた涙は止まって、とびきりの笑顔を見せてくれた。
そうかと思えば、今度はミク姉から身を乗り出して俺の耳元で
「 」
極上の言葉をもらって、嬉しくて、ギュッとミク姉を抱き締めた。
ミク姉はクスクスと嬉しそうに笑い、俺の背中に腕を回して抱き締め返してくれた。
今まで、ケンカばかりしてた。
このまま気持ちは伝えられないんだと思ってた。
いや、今でもケンカするよ?
でも、前みたいにただ言い合って、睨むんじゃなくて…。
言葉の一つ一つにどこか甘さがあり、気づけば笑いあってる。
あぁ、こういうのを
ケンカするほど、なんとやら
って言うんだろうな
「レンくん、どうしたの?」
「何でもない」
そっぽを向いて返事をすると後ろから抱き締めてきた。
あぁ、甘い。
今日も貴女の香りに酔いしれる。