短編

□ケンカするほど
2ページ/3ページ



ドキドキとうるさいくらい、心臓が鳴っている。

ミク姉の方を見ると黙ったまま俯いてる。

言うんだ、俺っ!!!!

好きって、伝えるんだっ!!!!

……まず、落ち着け。

深呼吸、3回。

よしっ



「「あのっ」」



見事にハモった。

すげぇ、タイミングのよさ。



「「いや、そっちからどうぞっ」」



はい、2回目。

この調子だと日が暮れるんじゃないか?



「じ、じゃあ、私から…」



小さくミク姉が右手を挙げておずおずと俺を見た。



「え、えーと、ね……さ、さっきの聞いてるかぎりだと、レ、レンくんは、わ、わわ、私のこと、す、す、すすすす、好…き、なんだよね?」



あぁ(やっぱり)聞かれてたんだ。

穴があったら入りたい。

恥ずかしくて、ミク姉から顔を背けつつ、正直に頷いた。



「ほ、本当に嫌いじゃない?」

「嫌いだったら、あんなこと言わない」



…しまった!!

変に素っ気なく言ってしまった!!

恐る恐る、ミク姉を見ると…



「……ひっく……ぅ…」

「っ!!??」



何故かしゃくりあげて泣いていた。

え、何!?

あまりにも、俺が嫌いで泣いちゃったとかか!?

もしも、そうなら、俺が泣きそう。

ヤバい、視界がボヤけてきた。

ちくしょ…。





「よ、良かった……うぅ…」

「え……??」

「だ、だって、いつもいつもケンカして、意地はって、レンくん、に…ひど、ひどいことばっか、言って、傷つけて……。き、嫌われてると思ってて、でも、嫌われたく、な、くて…大好きで、一緒に、いた…くて、ごめんなさい」



そう言うと今度は、わぁわぁと子どものように泣き出してしまった。

何だよ。

なんか、これじゃ、俺ばっかもらってんじゃん。

こんなにミク姉が泣いたトコみたこと、ない。

こんなに素直に気持ちを伝えてくれたこと、ない。

こんなに好きって言ってもらえたこと一度も、ない。

だから、俺だって…



「レ、レンくん…?」



もっと素直にならなきゃ、だよね。

泣いているミク姉をそっと抱き寄せて



「      」



小さくだけど、俺の気持ちを囁いた。

すると、その大きな瞳からポロポロと流れていた涙は止まって、とびきりの笑顔を見せてくれた。

そうかと思えば、今度はミク姉から身を乗り出して俺の耳元で



「       」



極上の言葉をもらって、嬉しくて、ギュッとミク姉を抱き締めた。



ミク姉はクスクスと嬉しそうに笑い、俺の背中に腕を回して抱き締め返してくれた。















今まで、ケンカばかりしてた。

このまま気持ちは伝えられないんだと思ってた。

いや、今でもケンカするよ?

でも、前みたいにただ言い合って、睨むんじゃなくて…。

言葉の一つ一つにどこか甘さがあり、気づけば笑いあってる。

あぁ、こういうのを












ケンカするほど、なんとやら




って言うんだろうな



「レンくん、どうしたの?」

「何でもない」



そっぽを向いて返事をすると後ろから抱き締めてきた。

あぁ、甘い。

今日も貴女の香りに酔いしれる。

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ